もうそろそろいいんじゃないかな、と思うけれど、やっぱりまた朝は来る。
清清しくもなんともない朝だ。
別に朝じゃなくてもいいんだ。
正直、一日が静かであればいいんだ。
イコール、朝をクリアしたって昼があるわけで。
結局また"ヤツら"は…!


「やあ、修行日和だな。どうだい?私が見てあげるから、あそこらへんの茂みで特別指導を」
「お断りします」
「冷たいなぁ。はツンデレというやつか?」
「シュウ様、集中できないんで向こうに行ってください」

すっぱりと変態指導者の申し出を切り捨てて、あたしは修行に集中している。
今日は朝を乗り切った。
でも昼だってヤツらは手を緩めない。
だからこうして変態の一人、白露拳のシュウ様も真昼間からあたしにちょっかいをかけてくるのだ。
いや、ちょっかいどころじゃない。
セクシャルハラスメントだ。
何かにつけて腰やら胸を触ってきて、その度に集中力が乱されてしまう。
迷惑なことこの上ない。
けれど、相手は年上で長老たちの信頼も大きい。
声高にセクハラだなんと言っても取り合ってもらえないだろうから、こうして我慢しているのだ。

「いやいや、私は君にもっと上を目指して欲しいと思っているから誘っているんだよ?」
「だったら茂みじゃなくてもここでできるでしょう」
「!、君、まさか見られて燃えるタイプじゃ…!?な、なんて変態ちっくな」
「変態はアンタだロリコンめ」

ずばっと言い返すと、シュウ様は仕方ないな、と苦笑して(苦笑で流されると腹立つけど)今日のところは諦めようかな、と言って去っていった。
完全に姿が見えなくなると、あたしは漸く改めて修行に集中できるようになった。
だがしかし、しかしだ。

「精が出るな、。んん?」
「…サウザー様…」

天敵はまだいる。
この男、サウザーもまた7人いる変態どもの一人だ。
いつかの酒の席で聞かれるままに故郷の師の話をしたら、それから妙に絡んで来る。
しかもセクハラだけじゃなくて結構嫌味なことを言って苛めてくるからいやだ。
どうもよくわからないけれど、あの宴会が何らかの引き金になったことは確かだ。

「なんでしょうか。何か御用でも?」
「別に用はない。…ふん、どうした?型が乱れているぞ」
「…はい」

また何か言われるのかと思って、あたしは仕方なく修行に集中することにした。
精神を統一し、ちゃんと型を練習していれば文句も言われないと思ったからだ。
しかし、今日のサウザー様の行動は予想外だった。

「おい、肩がしっかり引けておらぬぞ」
「ひゃっ!?」

なんとヤツはあろう事かあたしの乳を揉みながら指導をしてきたのだ。
もう完全にセクハラだ。
ちょっと当たっちゃったー、ごめんねテヘ☆レベルじゃない。
揉みしだきやがった!
訴えてやる、とあたしが睨みつけると、サウザー様はにやりと笑って言った。

「どうした?俺はお前の型を見てやっているのだぞ?」
「く…!この変態!離せ!」
「躾がなっとらんな…しっかり立たぬと転ぶだろう…?」
「やんっ!?」

今度は両乳を揉みやがり、あたしはついに肘鉄を食らわそうと身体を捻った。
しかしそれをひらりと避けて、サウザー(もう様付けなんかしない!)は怒ったあたしの様子に更に愉快そうに笑った。

「訴えても無駄だ。お前が喚いたところでどうにもならん」
「げ、外道…!」
「なんだ、これから夫となる男に酷い言い草だな?よ」
「…は?」

あまりに唐突な言葉に、あたしは文字通り目が点になった。
夫?
誰が誰の?

「貴様のごとき女は、俺くらいの男ではなければ扱えぬ。行き遅れる前に貰ってやると言っておるのだ」
「誰が行き遅れだ!!あたしはまだ17だぞ!?もっとマシな男がいっぱい…」
「案ずるな、お前の師にはもう話はつけた」
「いてチャンスが色々…ってウソォォォォ!?マジかよ!?」
「マジだ」
「そ、そんな…!」
「手紙もあるぞ。読め」

サウザーが懐から出した手紙を受け取って、あたしはその内容に呆然とした。

"へ。

 エエ男捕まえよったの!チョベリグ!昼も夜も仲良くせえよ☆ おぬしのテーチャーより"

とりあえず。
…エエ男ってなんだ、とか。
…夜も、って何の話だ、とか。
…ティーチャー発音できてねえよ、とか。
…今時チョベリグ?とか。

そんなことより何よりも。

「うおおおおおおおおおおお!!あんのエロボケジジイがァァァァァァァァァ―――――――!!!」

あたしは今までで最高の雄たけびを上げてびりびりと手紙を破り捨て、それからしばらく部屋に篭ったのだった。




ああ。神様、もしいるなら、いるんだったら!


どうかこの変態に追い回される可哀想なあたしを助けてください!!


5.変態はお前だ

逆ハー、と言うよりギャグハー。南斗の年長組みももちろん変態さん!!…どういう話だこれは…


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