久しぶりに朝、昼と恙無く過ごしたあたしは、そろそろ何か来るなと思い構えていた。 「…できれば何事も無ければいいけど…そうも行かなそうだな…」 一日の修練が終わると、あたしはすぐさま部屋に戻った。 「、トリック・オア・トリート」 そういって酢昆布を握らせると、あたしはすぐさまドアを閉めて鍵もかけた。 「、これ、なんか違うぞ!?お菓子はお菓子でも俺が欲しいのは酢昆布じゃなくてで」 どMの発言にぞわぞわと鳥肌が立って、あたしは椅子をドアにぶつけてやった。 だが、こんなのは序章に過ぎない。 「…何」 15センチほどドアを開けてみれば、シュウ様(一応まだ様付け)がにこにこして立っていた。 「、トリック・オア」 ばたん。 「最後まで言わせてくれ、頼む!」 バンバンとドアを叩く音がやかましいので、あたしは仕方なくドアを開けた。 「なんですか!?ハロウィンって大人が子供にお菓子あげるんでしょ!?シュウ様はもう立派な大人でしょーが!!」 ギンギンにガン飛ばしながら尋ねると、シュウ様はものすごくいい笑顔でこう言い放った。 「君に悪戯をしに」 ばたん、がちゃっ。 「、開けてくれ!痛くしないから!!!」 ドアの小さな覗き窓を改造して作った撃退用催涙スプレーのスイッチを押すと、シュウ様はげほげほと咽こんで逃げていった。 こんこんこん、とまたもやドアがノックされた。 「ああもううるさい!」 鍵を開けてドアを思いっきり開けると、前に立っていたらしいシンが見事にドアにぶち当たった。 「ぶはっ!?」 そういってばたん!とドアを閉め、もう一度鍵を閉めると、数秒も経たないうちにドアがノックされた。 「「トリック・オア・トリート」」 見事なステレオの決まり文句を言い放ったのは、回復したシンとユダだった。 「増えとる―――――――――!!!!?」 さっさと帰ってもらおうとみかんを二人の股間にぶつけると、あたしは素早くドアを閉めて施錠した。 そのうち呻き声が聞こえなくなり、今度こそこれでもう終わりにしてくれと願うも、やっぱり神様はあたしをとことん苛め倒すつもりらしい。 「ふむ。仕方ない、私は裏から突入するから、ラオウ、ここで待機していてくれ」 そんな挟み撃ちにされたら逃げ場がなくなるじゃないかと慌ててドアを開けると、案の定そこには暗黒大魔王(トキ)とラオウがいた。 「何の用だ、お前ら!!」 あたしががーがーと叫び倒すと、ラオウがさらっととんでもないことを言い放った。 「おろかな。お前のものは俺のものというだろう。さあ来い、すぐ来い、今来い」 部屋の中から引っ張り出した大量のおかきと干し梅を押し付けると、あたしはドアを閉めようとして がっ! 「あっ!?」 トキの足に阻まれた。 「くっ…あ、足を退けろよ…っ!!」 まずい、このままじゃ本当に拉致される! 「貴様ら、そこで何をしている」 その声にはっとして、あたしはドアを閉める手を緩めた。 「ふん…サウザーか」 トキが苛立たしげに舌打ちするのを見て、あたしは少し青くなった。 「おい、。出て来い」 こいつも警戒対象ではあるけれど、どうやらこの場は味方になってくれたらしいので、あたしは渋々部屋から顔を出した。 「何をされた」 あたしの返答を聞いたサウザーは、ぎっと二人を睨む眼を更に強くした。 「随分と調子に乗ってくれたものだな」 サウザーの言葉に、ラオウとトキは一瞬眉を顰めた。 「…いいだろう」 暫くの沈黙の後、先に折れたのはトキだった。 「トキ!何を腑抜けたことを!」 弟の言葉に、流石にラオウもそれ以上は何も言わず、悔しそうに舌打ちした。 「決まりだな。では、とっとと帰ってもらうぞ」 何とか去って行った二人の後姿を見て、あたしは些かの脱力感をおぼえると、その場にへたり込んだ。 「はあぁぁぁぁぁぁ…」 あたしが部屋の前で脱力していると、サウザーが何かを取り出してあたしに投げてよこした。 「わ、」 ぽん、と手に収まったのは、手のひらサイズの饅頭だった。 「…え?」 見ればサウザーは何故か明後日のほうを向いていた。 「たまたま貰ったのが余ったから貴様にやるといったのだ。今日はガキに大人が菓子をやる日なのだろう」 どうにも怪しいけれど、助けてもらった手前そうも言えない。 「俺はもう行く。さっさと部屋に入れ」 その言葉に、あたしは慌てて立ち上がった。 「お、おい!」 あたしが渋々礼を言うと、サウザーは軽く手を上げて帰っていった。
「…やっぱりなんか入ってるじゃないか…っ!!」 貰った饅頭をそこら辺のネズミに毒見させたら見事に交尾を始めやがったので、あたしはすぐさまそれを埋めると、もう二度とサウザーの言葉なんか信じるか!!と心に誓ったのだった。 |
変態シリーズ、サウザー落ちでした。ハッピーハロウィン!