Case 1. 再就職について

「602番でお待ちの方ー」

番号順に次の人を呼ぶと、野生的なイケメンがこちらに近づいてきた。
こんなイケメンでも職にあぶれるなんて、文字通り世も末、まさに時は世紀末だ。

「こんにちは。私、 と申します。ハローワークカードをお預かりしてよろしいですか?」
「うむ、よろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いいたします。お名前はレイ様でお間違いないですか?」
「ああ」

うん、声もいい。
相談員なんかやってると時々こういうイケメンと話が出来て得した気分だわー。
おっと、仕事をしなければ。

「それでは、本日はどのようなご相談ですか?」
「再就職の相談だ」

うんうんよく聞く。
今は失業者でいっぱいだものね。

「左様でございますか。失礼ですが、それでは現在は離職中で?」
「ああ、この間解雇された」
「まぁ……そうなんですか」
「しかし……俺は納得いかぬ!あんな事くらいで辞めさせられるなど……!」

イケメンが怒りに燃え始めた。
まあ解雇なんてされて気持ちの良いものでもないだろうし、怒るのもわかる。

「左様でございますか……ですが、ここは気を落とさず次の就職先を」
「俺はあの村にいたいのだ!」

宥めようとするもイケメンの怒りは激しくなる一方だ。
おろおろしていると、イケメンが頭を机に押し付けてきた。

「頼む!同じ村に就職できるようにしてはもらえぬだろうか!?」
「あ、あの、お客様、落ち着いてください……!」

うーわーもうマジ、ドン引きだよ。
しかも同じ職場って……そもそもなんで解雇されたんだろうこのイケメン……。

「ええと……そうですね……非常に難しいとは思われますが、まずはお話を聞いてみないとわかりませんので、以前の職場についてお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ああ。何なりと聞いてくれ」
「はい。それでは以前の職場ですが、"マミヤの村"こちらでお間違いございませんか?」
「そうだ」
「職種は"用心棒"でございますね?」
「その通りだ」
「では、解雇理由についてですが…………」

うーわー……!
とんッでもない内容が書いてあるぞコレ!!

「こ、こちらの……"女性の上司に対するわいせつ罪"………で…………お間違いは…………」
「違う!あれは俺なりの優しさだ!」

知るかよ!!
どんな優しさだよ!
なんて淫猥なイケメンなんだ……!!

「女を忘れたいなどと言うから、全裸にひん剥いて女であることをわからせてやったのだ。何が悪い!」

全部だよ!
法律なめんな!
公共の場で女を無理矢理ひん剥いたら10:0でお前が悪いわ!

「残念ながら全面的にそちらに非があると思われます。」
「なっ……!?」
「申し訳ございませんが、セクハラに対する知識を深めてお考えを少々改めて頂いた方がよろしいと存じます。こちらの『職場におけるセクシャルハラスメントについて』に目を通して、今後の求職活動にお役立てくださいませ」
「そ、そんな!待ってくれ、頼む!」
「603番でお待ちの方ー!」

はい、次。