Case 2. コミュニケーションスキルについて

「339番でお待ちの方ー」

番号順に次の人を呼ぶと、またもイケメンがこちらに近づいてきた。
今日のイケメンはちょっと前のビジュアル系っぽいキラキラロング金髪だ。

「こんにちは。私、 と申します。ハローワークカードをお預かりしてよろしいですか?」
「……これだ」

ってハローワークカード投げるなよ。
心象悪いぞー良くないぞー。

「えー……それでは、お名前はシン様でお間違いないですか?」
「うむ」

しかもちょっと偉そうだな……あ。
脚組むなよ……別に悪いわけじゃないけどさ。まったく長い脚ですこと。

「本日はどのようなご相談でしょうか?」
「……手に入らぬ女がいるのだ……」

…………うん?
なんだってなんだって?
聞き間違いかなー私疲れてるのかな?

「あの……失礼ですが、ご相談と言うのは……"恋愛相談"でございますか?」
「それ以外に何があるというのだ」

職業相談があるよ!

ここはハローワークなんだよ!!
ちゃんと看板見てからこいよ!!

「さ……左様でございますか。でしたら、あの、お手数ではございますが民間の恋愛相談所などがございますので、そちらをご紹介させて頂く形でよろしいですか?」
「む……!この俺をたらい回しにするつもりか……?
「いっいえ!けしてそういう訳では!」

て言うか来るとこ間違えてんだよ!
気づけよ!

「何故だ……何故ユリアは俺を愛してくれぬのだ……!」

どうでもいいよ!
私が知るかよ!!
あーもーめんどくさい!
こうなったら……そうだ、これだ!

「お客様?でしたらあの、今日のところはこちらの『間違いない!コミュニケーション力〜相手の心を知る力〜』など、ご参考にお持ち帰りくださいませ」
「……そうだな……俺はユリアの心をよりよく知らねばならぬのかも知れぬ……」

おお、落ち着いた。
良かったーまた周囲の相談員にジロジロ見られるところだった。

「フ……つい取り乱してしまったわ……世話をかけたな」

あら、しかもなんかいい感じに謝ってくれた。
何だ話せばわかるじゃない。

「いいえ、とんでもないことでございます」
「この本はありがたく借りてゆくとしよう」

いいぞーこのままいい感じで帰ってもう一度自分がいるところを確認するんだ!
そして間違いに気付いてくれ!
本は返さんでいいから!
あげるから!

「いえ、そちらは差し上げますので」
「いや。また来る」

来んのかよ!!!