Case 3. 自己分析について

「106番でお待ちの方ー」

番号順に次の人を呼ぶと、やたらキラキラしたイケメンが立ち上がってこっちに来た。
なーんか最近イケメン多いわ……でも大体厄介なんだよね……。
この人も面倒な事言い出さなきゃいいけど……。

「こんにちは。私、 と申します。ハローワークカードをお預かりしてよろしいですか?」
「よろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いいたします。お名前はリュウガ様でお間違いないですか?」
「間違いない」

ぱっと見きっちりしてるし真面目そうだ。
でもなー油断するとまた厄介なヤツだったりするからなー。
まあ人を第1印象で判断するのはよくないよね!
まずは話を聞こう。

「では、本日はどのようなご相談でしょうか?」
「……方向性が……見えなくなってきたので……」
「……」

おいおいおーい!
イヤな予感来るぞーコレ!
なーんか雲行き怪しいよーコレ!
人 生 相 談 してきそうだよこの人ー!!!

「えー……失礼ですが、現在は就業中でございますか?」
「ああ……」
「それでは、失礼ですがリュウガ様の求職票を確認させて頂きますね」

戻せ戻せ!
話を職業相談に戻せ!

「まず確認させて頂きますが、現在は"拳王軍"で就業中、こちらはお間違えございませんか?」
「無い」
「職業は"将軍"でよろしいでしょうか?」
「その通りだ」
「ありがとうございます。なるほど、領主の補助および領地周辺の警備が主な職務内容ですか………リュウガ様の場合は非常に責任あるポジションでお仕事をしておられるようですね。では、先ほどの"方向性"と言うのはお仕事の面でのお話でしょうか?」

てかそうだよな大体。
頼む、そうだと言ってくれキラメン!(キラキラのイケメンの略)

「いや……俺自身の宿星の話だ
「えー……宿星というと、占いなんかの占星術のようなもので……」
「そうではない。我が星は天狼星……俺は乱により北斗を戦場に誘う宿命を持っている
「それでは、その宿命に従ってお仕事をなさっているという解釈でよろしいのでしょうか?」
「そうだ。しかし……拳王様とケンシロウ……二つの巨木のうちどちらが乱世に置いて必要なのか判断が付かぬのだ……!
「まぁ……左様でございますか」

うわああーやっべーこれ最悪だー!!
ワケわからん事言い出したよ!
完ッ全に私、置いてけぼりだよ!!
マジでか……そういう……アレか……!
ヘタに扱うとより面倒になりそうだし……加減が難しい……!!
ああっ……どうしたら……あっ!そうだ!

「それでしたら、リュウガ様。こちらの『自己分析対応マニュアル』をご参考になさってはいかがでしょう?」
「自己分析……?」
「はい。方向性が見出せなくなったときは、まず立ち止まって自分自身をよく知ることも大切です」
「そうか……俺自身を振り返るということか……」

やった話通じた!!
よーしこのまま話を職業相談のまま終らせるのよ私!!

「また、こちらの世紀末公共職業安定所では自己分析セミナーなども随時行っておりますので、一人では上手くいかない場合や、客観的な視点で自分をどう見て貰っているかを知りたい時は、是非ご参加くださいませ」
「セミナーか……フッ。だが俺は孤狼……誰にも与せぬ……
左様でございますか。(ツッコミを諦めた)ではもし、ご興味がおありでしたら、そちらの案内も行っておりますので、是非お気軽にご相談ください」
「うむ……では行くとしよう。礼を言う。世話になったな」
「とんでもないことでございます。本日はお越し頂きありがとうございました」

キラメンは私の挨拶に無言で片手を挙げて、最後だけカッコよく去っていった。
よかった……無事攻略できた。
さて、次の人を呼ばないとね!