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群将から不思議な女が一人献上された。
清楚ながら上物と思われる衣装に身を包んだその女は、まるで作り物の如き黒檀のような細く長い髪、眼を縁取る長い睫、キャラメル色の肌の持ち主だった。
桜桃のような唇は瑞々しく潤っている。
しかしカイオウが最も気に入ったのは、跪き顔を上げた女の怪しく光る菫色の瞳だった。
爛々と輝き死の淵を映し出したような深い色のそれは、地獄を知っている目だ。
一目で気に入った。

「寄れ」
「…」

返事はしなかったが、女はカイオウに一歩近寄った。
黒檀の髪が女の小さな肩を滑り落ちる。

「名は」
「人に名を尋ねる時は己が名乗るが先ではないかえ?」

琴の音にも似た響きのよく透る声で、無礼を無礼とも思わせぬ言葉を吐いて女は哂った。
その瞳が羅将を前にしても恐怖に揺れることなく仮面を突き抜けて己を見据えている事に、カイオウは腹の底から感嘆した。
いい度胸をしている。
今までに差し出された女たちは皆カイオウを恐れて媚を売ることしか頭に無かった。
細い顎を取って上向かせると、女の視線がカイオウの動きを辿る。

「ほう…?女、この俺を恐れぬのか」
「さて、何を恐れろという」

女の声音は甘く蟲惑的にカイオウの耳朶を侵食する。
心の底から微塵も恐怖を感じていないらしいその声に、カイオウは何故だ、と問うた。
その質問に、女は挑発的な笑みを浮かべ答えた。

「魔に堕ちた獣など恐るるに足らぬ」

視線がかち合った刹那、東雲の空の色の瞳から覗いた狂気。
ほんの一瞬瞳に宿った纏わりつくような禍々しさは、並の女に放てるものではない。
首筋を撫でて上る妖気のような、それ。

「…得体の知れん女だ」
「吾は魔女じゃ。獣など見慣れたものよ」
「その魔女が何故ここにいる」
「何、吾の見目を気に入ったものがここに連れてきただけのこと。手向かいするも面倒での」

しなやかな腕で夜色の髪を払いのけた女の頸からは甘い麝香が香った。
さながらインド神話のドゥルガーの如き妖しく凛とした美貌がカイオウに向き合っている。
その美の裏に血の匂いと闇を隠して。

「…魔界の瘴気に侵されたか…」
「そうだ。より強くなるためにだ」

するり、と蛇のような指がカイオウの胸に宛がわれた。
鎧をつけて魔闘気を抑えているにも拘らず、女はまるで恐れる様子もなく妖艶に笑っている。
魔すらも手玉に取るかのような姿は、なるほど魔女と自称するのも頷けるだろう。
久しぶりに興味が沸く。
カイオウが喉の奥で密かに笑い女の目を見ていると、女はそれに気づいたのか胸に当てた指を滑らせ、両手でカイオウの頬を取った。

「そなたの目はまるで地獄の業火のようじゃな。どれ、その目で吾を焼いてみるかえ…?」
「…言ってくれるわ」

挑発的な女の言葉に、カイオウは愉しそうに口元を引き上げた。
このカイオウにここまでの口を利く女など見たことがない。
どうせ暇を持て余しているのだ。
女の誘いに興ずるも悪くない。
女を寝台に横たわらせて、肉体を覆う鎧を全て剥ぎ取ると、女もまた愉快気に笑った。

「吾はおいそれとは堕ちぬぞ、魔獣よ」
「ふん…それは良い事を聞いた。俺はカイオウという。女、名は」

再び話を逸らされては困るので、癪ではあるが自分から名乗ると、女は小さな笑みを浮かべた。

「…キサラ。キサラと呼べ」

今度は素直に答えた女―――キサラの瞳が、名を口にした時僅かに和らいだ。
名前に何か思い入れでもあるようだ。
不可思議な女だが、カイオウはその差にますます惹かれた。

キサラは横たわり柳の様に広がった黒髪を細い指で弄っている。
シーツに沈む細い腰を跨いで上から見下ろせば、艶やかな淡いブラウンの肌が乱れた首元からのぞく。
獣の瞳で自分を見下ろすカイオウに、キサラはしっかりと視線を合わせたまま薄い笑みを浮かべた。
長く感じなかった支配欲がカイオウの中で膨らみ始める。

「…俺は手に入りにくい女ほど欲しくなるのだ」
「奇遇じゃの。吾はしつこい男ほど焦らせたくなる」

キサラは眼だけで笑って見せた。
その洗い立ての桜桃のような唇に、居ても立ってもいられずにカイオウは噛み付くように口付ける。
キサラは抗わない。
変わりに、やってみろと言わんばかりに逆に舌を絡ませてきた。

―――面白い。
早くこの女を支配したい。
頸も、髪も、狂った眼も、何もかもを己のものに。


キサラ」


貪るような口付けを繰り返す。
情欲で熱くなった低い声で、男が囁く。




―――貴様を灼き尽くしてやる



淡い菫の瞳が男のそれと同じようにぎらついて、物言わずに応える。



やってみるがいい、できるものならば

まさかのカイオウ夢ですよ。
アダルティーな雰囲気が出てたらいいなぁ…
カイオウの嫁さんになれるよう人って、どんだけアブノーマルなことされてもケロッとしてるような女傑だと(勝手に)思うよ

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