この夢はさくら屋一葉の北崎あさみさまの連載の登場人物をお借りして書いてあります。
一部、知らないネタが出てくるかもしれませんが、ご容赦ください。

青く澄んだ空、燦燦と輝く太陽、その光を照り返し熱く焼けた砂浜。
季節は夏、本日は天晴れ也、であるからして。

「最高の海日和だな、!!」
「シュウ、いいから浮き輪を膨らませるの手伝って」

張り切ってビキニパンツを履いて今にも海に突っ込んでいきそうな夫に、は静かに返した。
が、シュウはこんな事で失速するような男ではない。

「ああもちろん!実は今日のために海で遊べるものをたくさん用意してきたんだ!きっとこれで子供達も喜ぶぞ!」
「あの子達ならもう遊んでるわよ?」
「な…!!!?」

シュウが海を振り返れば、子供達は既に思い思いに波に揺られてはしゃいでいる。
何時の間に。

「そんなっ、息子達よ!!」
「ちゃんと監督するのよー」

ショックを受けて滂沱しながらも、ちゃっかりパラソルをブッ差してから海に飛び込んだシュウに、は涼しげに手を振って見送った。
これで騒がしいのが片付いた。(酷)
子供達をシュウに任せて水着に着替えると、はビーチパラソルの下で涼みながら呟いた。

「それにしても、なんだか今日は知り合いが多いわね…」

浜辺を見回すと、よく見知った顔がバーベキューなぞ焼いて騒いでいる。
網を占拠しているのはジュウザらしく、肉ばかり焼いて盛り上げているようだ。
トキやケンシロウは勿論だが、ラオウは一家でご参加である。
まだよちよち歩きの小さい娘を、身体の大きいラオウが物凄く気を遣って扱っている様子は見ていて微笑ましい。

少し離れたところでは、以前会った事のある若い娘がリュウガにジュースを持っていこうとして元気よく転んで中身をぶっかけていた。
なかなか狙ってもできることではない。
しかもその後お詫びに焼きたての焼きソバを買っていき、再び同じことを繰り返すというホットなミラクル付だ。
当然リュウガはまた怒って彼女を追いかけていたが、暫くすると両手にカキ氷とヤキソバを二人分持って彼女のところに持って行っていた。
あれだけ酷い目にあったのに、わざわざ自分で買い直して来てやるということは、彼女はリュウガにとって非常に大切な存在なのだろう。

視線をバーベキューに戻すとジュウザに変わってトキが網を管理していた。
ジュウザの焼き方だと栄養が偏るからだろう。

「母さん、何見てるの?」
「あら、もう上がってきたのね」

声を開けられて振り向くと、水に濡れたシュウが子供たちを引き連れて浜に上がってきていた。

「ああ、みんなお腹が空いたというのでな」
「もうそんな時間?早いわね」

いつの間にか時間が過ぎていたらしく、太陽は既に真上に昇っていた。
が昼ごはんはどうするかと考えていると、シュウがそうだ、といい案を思いついたのか声をあげた。

、せっかくあちらに皆揃っている事だし、我々も混ぜてもらえないだろうか」
「ええ?でも材料に余裕がないんじゃないかしら?」
「何、丁度近くにスーパーもあったし、そこで買ってくればいい。みんなに会うのは久しぶりだし、どうだろう?」
「私はいいけど…あっちが頷いてくれるならね」
「だったら聞いてこよう。少し待っていてくれ」

シュウはそういうと屯している筋肉連中のところにかけていった。
その背を見送りながら、は夫の肉体美にううん、と唸った。
今更だが、いい身体をしている。
バーベキューをしている連中もそうだが、みんなよく鍛え上げられていて、無駄のない筋肉が綺麗についているのだ。
悲しい事は、みんながイイ身体をしすぎていて、逆に女の子が圧倒されて近寄っていかないところだろうか。
流石にあのムキムキの集団は迫力がある。
並の神経では入って行こうとは思うまい。

!大丈夫だそうだ!」

壮観だわ…と呟いていると、遠くからシュウが自分を呼ぶ声が聞こえて、は子供達を引き連れてみんなのところに向かった。





「よぉ、!お前らのところも来てたのかよ!」
「お邪魔するわね」

一番最初に声をかけてくれたのはジュウザだった。
彼は一時、の家にいたことがあるから気心が知れているのだ。

「ジュウザ、久しぶり!」
「おっ、ケンも来てたか。腹減ったろ?」
「うん!」
「そーかそーか、待ってろよ!適当に見繕ってきてやっから」

ジュウザはそういうと、ケンの髪をくしゃりと撫でて、まだ背の低いケンの目線に合わせて屈みにかっと笑った。
ケンを一番可愛がっているジュウザは、久しぶりに会った少年に頬が緩んでいる。
紙皿を手にして何本もの串を乗せているジュウザを見て、は苦笑した。

「あんなに食べられないわよ、全く」

我が子が可愛がられているのは嬉しいのだが、どうもケンは甘やかされがちだ。
困ったものね、と肩を竦めていると、シュウがの肩を叩いた。

、貰ってきたぞ」
「ありがとう、シュウ。おいしそうね」

紙皿に載せられた串焼肉や野菜を見て、は顔を綻ばせた。
網のほうを見遣ると、トキが忙しそうに次の野菜を並べている。

「トキはちゃんと食べてるのかしら?」
「うむ、私も聞いたが間を縫ってしっかり食べていると言っていたぞ。他の者に任せるとろくな焼き方をしないから仕方なく彼が焼いているそうだ」
「ああ…やっぱりそうなのね」

串肉を一つ手にして食べながらトキの様子を見ていると、ユダが隙を狙ってトリ皮を丸ごと焼こうとして怒られていた。
会話に耳を傾ければ、なんとも情けない内容が聞こえてくる。

「ユダ、そんな大きな皮を焼こうとするんじゃない!」
「何を言うのだ。これは俺の美しさを保つのに必要なコラーゲンがたっぷりと含まれているのだぞ」
「だったら納豆でも食べていなさい。肌が綺麗になるそうだぞ」
「納豆は焼けんではないか!」
「別に焼かなくてもいいだろう」
「ぬう、全く貴様はわかっていないな!これだから泥臭い北斗など気に食わんのだ。美というものを少しも解していない」
「ラオウ、ウインナーが焼けたぞ」
「あっ、貴様シカトするな!」



「「………」」

わざわざ聞かなくてもよかった。
むしろ、聞いて損した気分になる。

「シュウ」
「む?」
「うちの子は、自分に陶酔するような人間にはならないように育てましょう!」
「ああ、そうだな」

そんなことを行っていると、今度はシュウの皿にピーマンを入れようとしているレイが目に入った。

「こら、レイ!お前はまた子供のような事を!」
「そんなに怒らなくてもいいだろう…俺はピーマンは好かんのだ」
「だからといって人の皿に移すんじゃありません!一切れでもいいから食べるんだ、栄養が偏るぞ」
フッ…俺は嫌いなものには手を出さん主義でな」
「何がフッ…だ!カッコつけても無駄だぞ、ちゃんと食べなさい」
「ううっ!そうだ、ケン!大きいほうの!」

シュウに押し切られそうになったレイは、何を思ったかケンシロウを呼びつけると、のそりとやってきたケンシロウに言った。

「ケン、実は折り入って頼みがあるのだ」
「なんだ」
「何も言わず、口を開けてくれ。」
「構わんが」
「「オイ!」」

レイの頼みに、特に何を考えた素振りもなく頷いたケンシロウに、シュウとは思わず夫婦で突っ込んだ。

「口を開けてはいかんぞケンシロウ!レイは自分の嫌いなピーマンをお前に食べてもらうつもりなのだ!」
「何っ?本当か、レイ」
「何を言う。俺とお前の仲ではないか。それとも俺が自分の嫌いなものを人に押し付けるような男に見えるのか?」
「うむ…それもそうか」
「そんなに簡単に納得しちゃ駄目でしょう!貴方、そんなことでは今にもキャッチセールスに捕まって50万くらい巻き上げられわよ!?」
「俺はそんなに持っていないが」
「「そういう問題じゃない!」」

結局見当違いな発言をするケンシロウの相手をするうちにレイはチャンスを逃してしまったようで、シュウに無理矢理ピーマンを食べさせられていた。
物凄く嫌そうな顔でピーマンを咀嚼するレイと、騙された事に全く気づいていないケンシロウを見て、は近くにいたシバに遠い目をして言い聞かせた。

「シバ。貴方はこんな大人になっちゃ駄目よ…」
「?うん、わかったよ母さん」

ちら、と他の人に目をやると、ラオウは山のように肉を積んでトキに起こられているし、シンはユリアの水着写真ばかり追いかけて望遠まで持ち出している。
サウザーは俺様聖帝様とばかりに、一人で大きなパラソルの下に長椅子を置き、モヒカンにジュースを持たせてセレブ気取りだ。
まともに見えるのは意外にも大人しく浅瀬で魚を獲っているジャギと、網を守って栄養が偏らないように野菜を焼いているトキ、彼女とのんびりかき氷を食べているリュウガくらいのもんである。

混沌たるその光景に、は悟った。

ここには常識がない。

皆、男としては問題ないが、人間としてはちょっと問題ありなのだ。

「…シュウ。私、決めたわ」
「何をだ、?」



「この子達を…まともな大人に育てるって!!」




そう、いくら力が強くても、拳法に優れていても、ナルシストはよくない。
好き嫌いが多くて人の皿にピーマンを乗せていてはいけないのだ。
肉ばかり焼く偏食家になってもいけないし、人の言う事を鵜呑みにしては他人の嫌いの物を食わされるかキャッチセールスに捕まるのである。

夏の日差しが燦燦と照りつける中、拳を握って高々と宣言したに、夫のシュウは頷いた。
余計な一言を付加えて。


「そうだな、皆のような!」








「だからそれが駄目だって言ってるのよ――――ッ!」

「ぐはぁ――っ!」

静かな波が打ち寄せる正午、妻のパンチを顎に食らったシュウはいい笑顔で暫く海に浮いていたのだった。

北崎あさみさまに送る相互記念夢第2弾!!
遅くなってすみません…そして中途半端なギャグですみません…!!!
前から書きたかったビーチネタで書いてみました。
おかしな箇所がありましたらいつでも言ってやってくださいまし。


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