花のような香りがするの部屋は、いつも整っていて掃除が行き届いている。
明るく淡いグリーンのカーテンも、色味に合わせておいてある淡いイエローのクッションも、きれいに整えられていて見ていて気持ちがいい。

不満を言えば、心地よいその空間で彼女が恋人の俺を差し置いてパソコンと格闘している事くらいだろうか。
大学のレポート作成なのだそうだ。
は座椅子に座って、ガラステーブルに置かれたノートパソコンと睨み合っているのである。

講義が昼までで終わって、ふとは今日は一つも講義が無いと言っていたことを思い出した。
会う予定は無かったが、なんとなく会いたくなって彼女の住むアパートまで来て見れば、彼女は嬉しそうに、しかし申し訳なさそうな顔をした。
聞けば提出期限は二日後なのにバイトの所為で全く進んでいない、だから今日はあまり構ってあげられないのだ、と言う。
そんな風に言われてしまえば怒る気など全く起こらないし、元々押しかけたのは俺の方なのだから、気にするなと言うのが当然の流れである。
けれど退屈が拭えるわけではない。


「なにー?」
「いい天気だな」
「んー」
「進んでるのか?」
「んー」
「……」

生返事だ。
想定済みではあるが、癪ではある。
予めわかっていたこととはいえ、存在を蔑ろにされるのはあまり嬉しいことではない。
邪魔したいわけではないけれど、ただ、無性に振り向いてほしくて。

「雑誌、勝手に読むぞ」
「んー」
「コーヒー要るか?」
「んー」

ポットに水を入れて湯を沸かす。
勝手知ったる恋人のキッチンだ。
ドリップコーヒーがどこにあるのか、と俺のマグがどの棚か、砂糖とミルクは入れるか入れないか。
そんなことは聞かなくてもわかる。
俺はブラックで、はミルク一杯と角砂糖が2つが基本。

リビングを見れば、はまだ細い指で忙しそうにキーボードを叩いている。
何故か違う空間に居るような錯覚を覚えて、俺は二人分のマグを手にの隣に座った。

「…なぁ、
「んー」
「愛してる」
「んー…ん?」

そこでそろそろ何かがおかしいと言う事に気づいたらしい。
はパソコンを見つめていた眼を画面から話して、俺を見た。
やっとこっちを見てくれた。
たったそれだけのことが嬉しくて、どうせならこのまま調子に乗ってやることにした。
コーヒーの入ったマグを渡すと、は眼を瞬かせながらもそれを受け取りありがとう、と言った。
混乱していながらも素直に礼を言う姿がおかしくて、駄目押しに言葉を加える。

「そろそろ同棲するか」
「え、え!?」
と過ごしたい。毎日」
「ちょ、えっ、は!?レイ、今なんて!?」
「お前とずっと過ごしたい、と言ったんだ」
「…は……!?や、嬉しい、けど、え…?」
「異論は無いみたいだな。よし決定」

の顔は赤くなったり青くなったりと変化に忙しい。
思った以上に面白い反応をしてくれたことと、ちゃんと話を聞いて俺を見てくれたことで、胸の中がすっとした。

「と、いうわけでだ」
「なっ、なにっ」
「今はパソコンにお前を譲ってやる。さっさとそいつを済ませてしまえ、ほら!」

ついでに攫ったの唇は大目の砂糖で甘ったるくなったコーヒーの味がして。

「ご馳走様」
「にが…ブラック…」
「甘かったぞ?」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」



あまいにがい
ほんと、どうしたの突然!?
別にどうもしないが?

レイ夢現代風。
初めて夢小説っぽいものになった!!(うわぁ)
大学生設定ですYO!



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