Darling, you know
what?
一番のお気に入りの着信音が鳴って、10秒ほど鳴り続いてぴたりと止まった。
微かに振動しながら机の上で踊る携帯電話を眺めても、はその電話を取ることはしない。
この着信は彼からで、きっと昼からずっと鳴らしている電話に出ない自分を心配しての電話だろうと思うから。
元々彼は――サウザーは、あまりのことを気にしない。
今日はレイとどこに行った、昨日はユダとお茶を飲んだ、そんな話をいくらしたって彼はいつもこう返す。
"ああ、そうか"
そんな態度に拗ねたくなる気持ち、世間一般の女の子なら何となくわかるはずだ。
構って欲しいだけの女になりたいのではないけれど、それにしたって無関心すぎるんじゃない?ってこと。
そりゃあ決めるところはちゃんと決めてくれてるし、私のことほんとに好き?なんてくだらない問いをするほどじゃない。
でも、やられっぱなしは性に合わないから、そろそろ反撃したっていい。
きっと見えない思わぬ攻撃にびっくりして調子を崩されて、それからイライラしている事だろう。
今頃は電話の前でやきもきしているだろうか。
携帯電話を見つめて着信を待っているサウザーの姿を思い浮かべて、は小さく笑った。
きっと眉間に皺を寄せて、机の上をとんとんと指で忙しなく突付いたりして、コーヒーを淹れても飲む気にならずに放置してあったりするのだ。
電話をかけたら間違いなく、何をしていたのだ、とか、俺の時間をどうしてくれる、とかそういう文句が飛んでくるだろう。
だとすれば、それはつまり、それだけ気にしてくれているってこと。
いい加減に反撃の手を休めてあげてもいい頃だろうか。
寂しがり屋の彼は機嫌を損ねると、とんでもなく我侭になるから。
(どうやって御機嫌とってあげようかなぁ)
すっかり拗ねているだろう彼が、一瞬嬉しそうな顔をして電話に飛びつく様を想像しながら、はようやく短縮ボタンを押した。
「もしもし、サウ?ごめんね、何だった?」
『!一体どこで何をしていたのだ!!』
コール一度で電話に出たサウザーの声は予想通り不機嫌だったけれど。
(そこが可愛いんだよねぇ)
『おい!聞いているのか、!』
「やだな、聞いてるよ、ちゃんと。ふふ」
ねぇ、ダーリン。
これも私の手の内だってこと、わかってる?
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