「ぎゅってしていい?」 リカの言葉に、 は小さく吹き出した。 抱きしめていいかと聞けばいいようなものを、上手く言葉が出てこなかったのか子供みたいな言い回しをした彼が可愛く思えたからだ。 「……笑うなよ。いいだろ、どんな言い方したって」 「ごめんリカ。謝るから拗ねないで」 はにこりと微笑んで、リカが抱きつきやすいように両腕を軽く広げた。 恋人の反応に機嫌を良くして、リカは正面から のからだを抱きしめる。 の首元、耳の下あたりに顔を埋めて深く息を吸い込むと、彼女の優しい 匂いで胸が満たされて、リカの人肌恋しい気分が和らいでいく。 普段は俺様なリカがすっかり甘えん坊モードなのを見て、 は彼の背中を優しく摩りながら尋ねる。 「リカ、どうしたの?疲れてる?」 「別に……寒いから」 「寒いの?なら上着、着たらいいのに」 「うるせーよ。いいからもっと腕に力入れろ、まだ寒い」 「もう、仕方ないなあ……」 リカがぶっきらぼうにリクエストを追加すると、 は苦笑しながらも大人しく彼の言葉に従って、リカを抱きしめる力を強める。 すると彼女の柔らかい二の腕のあたりがリカの頬に当たり、ふわふわして気持ちがいい。 当の彼女はリカが二の腕を触ると何故か太っていると言われているような気がして嫌なのだが、リカにしてみれば抱き心地の良い恋人の可愛い部分 にしか思えない。 「あー……あったかくて柔らけぇ……」 「や、柔らかいは余計だよ」 「ばか。そういう意味じゃねえって」 リカは恋人に抱きついたまま、しばらく頭を撫でたり髪をいじったりと好きなようにしている。 も で、離れる気配のないリカを抱きしめたまま でいた。彼女はリカが寒がっていると本気で思っているのだ。 「……お前ってほんと、危機感ゼロだよな」 「え?」 「こんなに密着して、何もされないって思ってるのかよ」 少しだけ身体を離して恋人の顔を覗き込み、にやりと悪戯っぽい笑みを浮かべたリカに、 は見る間に彼の言葉の意味を理解して顔を赤くした。 「っ……!だ、だってリカが寒いって言うからっ」 「だから……?」 「だ、だから……寒いなら、あったかくしなきゃって……」 「だよな?だから……」 リカは の唇に啄むような口付けを落として、先ほどまで顔を埋めていた の首元に再び顔を寄せ、少しだけ冷えた柔らかい耳朶を甘噛みして囁い た。 「……もっと暖めてよ。俺のこと……」 その後のふたりを知るのは、窓から覗く月のみである。 |