私の大好きな人は、とても背が高い。
足も長くって、かっこいい。
身長差は40cmくらいあると思う。
だから立って向かい合う時は、私はいつも上を見上げなきゃいけない。
それも、ほとんど真上を。

「リュウガさん」

前を歩く彼の名を呼ぶと、立ち止まって振り向いてくれた。
少しだけ距離を取ると、見上げなくてもちゃんと視線を合わせられる。
でも、やっぱり間が出来てしまうのはなんだか、嫌だ。

、どうした?」
「ううん。なんでもないです」

駆け寄ってしまうと、目線がまた合わなくなる。
でも、差し出された腕に自分の腕を絡めたら、距離はゼロになって、優しい男の人の匂いに包まれる。
逞しい腕は、組んでいるだけでとても落ち着く。
隣に居てくれるのだと感じられるから。

嬉しくなってぎゅっとその腕に頬を寄せると、頭を撫でられた。
温かくて大きな手は、この人の見かけよりもずっとごつごつと節くれだっていて、包容力がある気がする。
この人の声も、腕も、掌も、全部が大好きで仕方がない。

「ちゃんと前を見て歩け。転ぶぞ」
「転びそうになったら支えてくださいっ」
「…仕様のないやつだ」

呆れたような声で私の好きなようにさせながら、さり気なく歩幅を合わせてくれた。
この人の、こういう小さな気遣いが嬉しい。
ちゃんと私を見てくれているとわかるから。

前から来る人にぶつからないように少し引っ張ってくれたり、車が通る場所は絶対に道路側には行かせないようにしてくれる。
ちゃんと恋人同士だとわかるように、腕が空いている時はしっかり肩を抱いていてくれる。
前に手を繋いで歩いていたら、妹かとからかわれたことがあったからだろう。
結構ショックで、でもがんばって顔に出さないようにしていたのに、やっぱりばれていたらしい。

この人に隠し事は出来ない。
私のそれなりに定評のある仮面は、いつも彼の前ではまるで薄い硝子のように簡単に割れて剥がれ落ちてしまう。
それは一番私をわかってくれているのが、この人だということ。
こんな大人の恋人の、たくさんの小さな優しさのおかげで、私の自信は何とか保たれている。
けれど、いつまでもこのままでは居たくない。


まだ、背伸びしても唇すら届かないけれど、


もっと大人になって、綺麗になって、あなたの隣を堂々と歩いて見せるから。

「リュウガさん」

「なんだ」

「ちゃんと、待っててくださいね?」

「?何を」

「秘密ですっ」


わたしがあなたにおいつくまで。



Someday, I will...

リュウガ兄夢、ジェヴォーダン現代風味のヒロイン視点。
ジェヴォーダンの現代パラレルで、リュウガ兄はエリート警視(27)で
ヒロインは21にして犯罪心理学者とかいう裏設定があったりなかったり

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