「ぬぬぬ…なんで音が出ないんだろう…」 言わないでくださいよー、とまた別の意味で口を尖らせたは、暫くうんうん唸ったあと俺の傍に寄ってきた。 「リュウガさん、お手本見せてください!」 しぶとく催促してくるので、早く本の続きを読もうと唇を少し窄めた瞬間、が顔を近づけたかと思うと やられた。 まんまと悪戯に引っかかったと言うことか。 「っ、……驚かせるな」 お返しに唇を奪って抱き込んでやると、はじたばたもがいて、やがて大人しくなった。
ひゅう、ひゅう、と気の抜けた音が聞こえる。
先日ジュウザが来て、どういうわけか口笛が吹ける吹けないなどというくだらない話になり、一人吹けなかったが名誉挽回とばかりに練習しているのだ。
唇を尖らせて息を吹き出す様は見ていて面白い。
正直なところ、タコかアヒルのようにしか見えないが。
「下手だからだ」
「うぅっ」
そして椅子に腰掛けて本を読んでいる俺の膝の上に乗ると、相変わらず気の抜けた顔で言った。
「別に口笛の一つや二つ吹けなくとも問題ないだろう」
「いいからお手本ですっ」
「………」
―――ちゅ。
「……!!」
「えへへ、引っかかったー!」
呆然としている俺を見て、はほんの少し頬を染めて恥らいながら満面の笑みを浮かべていた。
「あれ、リュウガさんちょっと照れて」
「うるさい」
お前ら自重しろ!!そういう月見里が一番自重したほうがいい。
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