ここデルムリン島では大魔王と戦った男メンバーだけの飲み会が時折行われる。 そんなむさくるしい飲み会で、酔ってへべれけのポップが酒を片手にヒュンケルに絡む。 「で、どーなんだよ、お前。」 ポップの質問の意味を理解したヒュンケルは、「行ってらっしゃい。楽しんでね」と言って自分を送り出した恋人を思い出した。どうも こうも、特別に人に話すようなことは無い。 「何も変わりない。…少し飲みすぎじゃないか」 苦笑しながらのヒュンケルの返答に、ポップは「けっ、コレだから美形は!」と勝手な八つ当たりをしてダイの所にふらふらと歩いてい く。ヒュンケルもいつもの事なので気にすることなく酒を口にしたが、二人の仲についての話題は終わらなかった。 「変わりないってのはマンネリってことじゃねえか」 ノヴァを伴って珍しく参加していたロン・ベルクが酒を煽りながら口にした言葉に、ヒュンケルは初めて気づいた。確かに自分は
から愛を受けており、それに応えているつもりだった。しかし彼女を楽しませようとして特別変わった何かをしたことは無い、というよりどうすれば彼女が喜
んでくれるのか見当もつかない。 「うーむ…ならば刺激が必要だなあ」 そう言われても何が特別で何が特別でないのか、わからないから焦っているのだ。 「お前らヤる時はいつも家か?」 ロンはニヤニヤと笑いながらヒュンケルを玩具でも見つけたかのような顔で見ると、酒を煽りながら言った。 「アオ●ン試してみろ」 ロンの台詞を聞いたクロコダインが酒を豪快に噴いた。 「ブフォッ!!ロ…ロン・ベルク殿!!」 意味がわからず友に説明を求めたヒュンケルだが、クロコダインは言葉を濁し、ラーハルトも勝手にやってろと言わんばかりにさらっと
あしらう。
「 」 微風に揺れる髪を撫でて声をかけると、 は眠そうな目でヒュンケルを見上げた。 「ヒュンケル…おかえりー…」 ぐっと伸びをして息をつき、笑顔で両手を伸ばしてきた恋人の様子に、ヒュンケルは胸が温かくなるのを感じた。 恋人関係になってからというもの、 はヒュンケルの前では大いに隙を見せる。恋人になる以前は何でも自分でやってしまうところもあったが、今ではヒュンケルが手を伸ばせるように自分から隙 を見せてくれるのだ。 ヒュンケルが伸ばされた両手を取って を長椅子から立ち上がらせると、立ち上がった勢いで がヒュンケルに抱きつき、銀色の頭に手を伸ばした。 「…?」 恋人の二日酔いまでお見通しである。柔らかい光が二日酔い独特の頭痛とだるさを緩和していく。ヒュンケルは目を閉じて酒毒が消えて いくのを待ち、 の手が離れると口元を綻ばせた。彼はこの美しく聡明な踊り子の手がとても好きなのだ。戦場から離れればいつも、この優しい手が彼の傷を癒していた。 「ハイ終わり。ポップに言えばやってくれるのに」 素直に礼を言ったヒュンケルに、 もにこにこと嬉しそうに笑った。 も で、面倒臭がるフリをしているが世話を焼くのが好きな性質なのである。 しかし、ヒュンケルはここでふと、ロン・ベルクの言葉を思い出した。 ヒュンケルは思った。一度あの意味不明な言葉の意味を聞いてみようと。 「…
。聞きたいことがあるんだが」 ヒュンケルのぶっ放した台詞に、当然
は固まった。 相手はヒュンケルだ。この甘いマスクの恋人は引くほどガチで常識や俗世の知識を理解していない。そういう所も可愛いので好きになっ てしまったわけだが…今回も酒の席でからかわれた事すら気付かずダイレクトに質問したに違いない、と。 「…………どこで覚えてきたのソレ」 ほーらやっぱり。 「んー……ねえヒュンケル」 唇に細い人差し指を当てて少し考えた後、 はキャビネットからバスケットを取り出して、続いて長椅子からブランケットを手に取った。ヒュンケルが未だに回答を得られず当惑しているのもさらりと無 視して、 はブランケットを畳みながらゆったりと彼に微笑み、提案した。 「今日は森の中を散策しない?」
「静かで気持ちいいねー」 地図で見れば南に位置するパプニカの気候は温暖で、一年を通して温かい日々が続く。特に今は花と緑が最も美しいとされる時期であ
る。太い木々に絡まる蔦や、しっとりと包み込むような緑の苔に混じって、白い花がちらほら咲いている。 「ここまで来れば誰も来ないよね」 はブランケットをバスケットから取り出して短い草の生えている箇所にふわりと敷いて、その上に靴を脱いで座る。そしてヒュンケルにもブランケットに座る ように促すと、腰を下ろした男の肩に甘えるように凭れかかった。恋愛初心者の男の鼻腔を柔らかい髪の甘い香りが擽る。 「…
、その…あまり…密着するのは…」 焦るヒュンケルと対照的に
は当然といわんばかりにするりと体を移動させ、大胆にも向かい合うように恋人の膝に馬乗りになると、目を逸らして頬を染める男を見つめ、視線を口元に移
動させて艶っぽく笑んだ。 口付けを誘うような視線を向けては、中々触れさせようとしない恋人の行動に戸惑いながらも、ヒュンケルの目は徐々に の唇にのみ集中していく。潤んだ唇は瑞々しく、誘われているのに進めないもどかしさに焦れたヒュンケルが強引に唇を重ねようとすると、今度は両手で頬に 手を添えられて止められる。行動の意味が解らずに切なげに自分を見つめるヒュンケルの耳元に、 が唇を寄せて囁いた。 「…教えてあげる…アオカ●の意味……」 囁きついでに耳朶を軽く唇で噛まれて、ヒュンケルの背筋をぞわりと甘い痺れが走った。隙を突いて焦らされ続けた唇が強引に重なって きて、圧し掛かられるままにヒュンケルの身体がブランケットの上に倒される。 「知りたいんでしょ…?」 顔を離した の目は、野生の獣のそれだった。
二十二歳の性教育 「野外ってあんまり好きじゃなかったけど、たまにはいいかもねー」 「……………!?」 |