誘って押し倒されたは良いものの、抱かれる前に身体だけは綺麗にしたかったので、
寸止めで家の裏手の手作り風呂(大きな盥にお湯張るだけ)でさっと汗を流した。手作りの目隠し用の柵の中で濡れた髪をタオルで軽く乾
かし、櫛で梳いて香油入りヘアオイルで手入れする。身体にはお湯の上にオイルを垂らして、汚れを落とした後で浸かるだけでしっとりす
るという時短の保湿。待たせるのも可哀想なので、いつもよりケアが手抜きだけれど、シンプルな白のブラと紐パンの上にラフなシャツと
巻きスカートだけ着て、家の中に戻る。
屋内では暖炉の火が柔らかく室内を照らしている。ラーハルトは不機嫌そうにベッドに腰かけて待っていた。このタイミングで待たせるな
と言わんばかりの表情に申し訳なく思うけれど、ムダ毛などの手入れは毎日しているからいいとしても旅から帰ってきたばかりの埃まみれ
の状態で抱かれるのは嫌だ。せっかくなら綺麗な身体を抱いてほしいと思う。これでも最短で綺麗にしたんだから、むしろ褒めていただき
たい。
「……お待たせ。」
あんまりバタバタするのもムードが無いから、早まる鼓動を抑えながらゆっくりとこれから自分を抱く男の隣に座る。ぎしり、と軋んだ
ベッドの音が、静かな室内では妙に大きく聞こえた。直前でお預けにしたから機嫌を損ねただろうかと思い、そっと肩に頭を乗せて顔を下
から見上げると、不機嫌そうに顰められていた眉がぴくりと動いた。
「――お前……匂いが……」
どうやら私の小さな変化に気付いたらしい。些細なことだけれど、気づいてもらえると嬉しくなる。
「……うん。本気で吹っ切りたいから」
ラーハルトに返事を伝えて、彼が想いを受け入れてくれるなら、ヒュンケルの気を引く為に使っていた香油は捨てようと決めていた。だか
ら今夜から使う香りは、以前使っていたフローラル系のものだ。初めてラーハルトと出会った時にも、この香りだった。
「前のにしたんだけど……どう……?」
香油の所為で気分が乗らないなんて言われたらどうしようかと思いつつ恐る恐る問いかければ、ラーハルトの手が頬に触れた。熱い指先が
頬をなぞる感触にぞくりとして溜息を漏らした私の反応を見て、ラーハルトが小さく笑みを浮かべ、顔を近づけて耳元で囁いた。
「……悪くない」
耳に当たる吐息の熱が小波のように脳内に伝播する。直後に肩を押されてベッドに倒され、左手を耳の後ろに添えられて深く口付けられ
た。熱を持った指先が耳の後ろを擽るように蠢いて、心地よい快感に頭が痺れていく。相手の唇を唇で挟んで引っ張り、舌でなぞって、
甘ったるいキスに溺れそうになる。
「……は……ん、」
長いキスの後は首についばむように口付けられる。軽く唇で触れられただけなのに背筋がぞくぞく痺れて、身体から力が抜けていく。息遣
いの中に甘い声が混じり始めると、ラーハルトの手が服にかかった。シャツを脱がされてスカートを解かれ、ものの数分で下着姿に剥かれ
て、露わになった脇腹に熱い舌が触れてくる。
「んあっ……!」
反射的に漏れた声に、ラーハルトがふっと笑った。
「良い声だ」
言葉にされた瞬間に途端に羞恥心が湧き上がってきて、咄嗟に口元を手で押さえる。数か月前まではただの仲間で、男友達だと思っていた
人に抱かれている。予想だにしていなかった状態を再認識させられて恥ずかしい。ラーハルトは私の様子を面白そうに見ながら、無防備な
胸に手をかけて下着を上にずらし、暴いた胸元をじっと見つめて意地悪そうな笑みを浮かべた。
「っ、ふ、んんっ!」
尖り始めた頂点の片方に吸い付かれ、熱くぬめった舌先で敏感な部分を弄られる快感が脳を走り抜けた。もう一方は指と掌で優しく責めら
れている。じっくりと胸だけを舌と指で弄ばれて、刺激を与えられるたびに身体が跳ねた。
「ん、っん……!」
「……どこまで我慢できるものか……」
熱い息がかかる感触すらも小波のような快感になり、秘所が濡れ始めているのがわかる。声は抑えているくせに、身体は勝手に愛撫されて
いる胸を突き出すように背中を仰け反らせ、腰を揺らし始める。こちらの反応を見て、ラーハルトは尖った頂点にキスを一つ残して胸への
愛撫を止め、残っていた下着の紐をするりと解いた。
「あ、あの、」
「なんだ」
「……長いこと、してないから……優しくして……」
今さら言うのもなんだけど、と思いつつお願いすると、青い手がそっと頭を撫でて、太腿の内側に沢山キスされた。
言葉での返事は無くても気遣ってくれているのが伝わってきて、ほっとする。
胸元に残っていたブラも取り払われ、裸身を晒す。ラーハルトは数秒、露わになった肌を見詰めていたけれど、何も言わずに両足に手をか
けて左右に押し開いた。するんだから見られるのはしようがないとしても、恥ずかしいものは恥ずかしい。下腹部を隠そうとして手を伸ば
すも、構わずラーハルトの指が秘所に触れてくる。
「んっ……!」
「……痛みがあれば言え」
欲情して濡れた秘所に、いつもは槍を操っている指が沈み込んでいく。この世界に来て初めて他者の侵入を許したそこは、指1本ではさほ
ど痛みもなく、微かにひりつき、裡を撫でられる感覚しかない。平気、と答えると、すぐに指がもう一本侵入してきた。裡を押し広げられ
る感覚で腰が跳ねた。2本の指で裡を擦り上げられ嬲られて、痺れに似た快感が脳まで走る。
「っひ……!あんっ!」
堪らずついに甘い声を上げれば、ラーハルトの指の動きが速まった。小刻みに出し入れされて内壁を指の腹で擦られて、身体が蕩けてい
く。指だけで昇りつめ、軽く絶頂させられて、痙攣した秘所からねっとりと濡れた指が引き抜かれた。絶頂の余韻で頭がぼうっとする。
狭い部屋に自分の荒い息遣いと、ベッドを降りたラーハルトが服を脱ぐ衣擦れの音だけが聞こえる。責められている内にベッドから落ちそ
うになっていることに気付いて、身体の位置を変えようと身を起こした時、暖炉の明かりに照らされた男の裸身が目に入ってフリーズし
た。
ちょっと待てなんだその槍。ちょちょちょ長い、間違いなく一般より長い。今まで見た中で一番長い、って言ってもそんな数見てるわけ
じゃないけど。間違いなく2人目の元彼(16センチ)より長い……16センチは見かけ倒しのフニャチンだったけど、こっちは硬度もあ
りそう。20センチ近くありそうなんだけど、魔族ってこれが普通なの?それともラーハルトがそうなだけ?局部を目にして固まっている
私に気付いて、ラーハルトは気まずそうに苦笑した。
「……怖いか?」
「あ、ご、ごめん、じっと見たりなんかして。ちょっとびっくりしただけ……すごいなって……」
私の返答に、ラーハルトはふっと笑うとベッドに再び戻ってきた。
あんなので突かれたらどうなるんだろう。怖さと期待が混ざって胸が高鳴る。ベッドの上で体の位置を正して再び横になると、逞しい裸体
を晒した男が再度、私の両足に手をかけて、開いた足の間に身体を入れてきた。天を衝いているそれは今にも弾けそうになっている。
「挿れるぞ」
濡れた秘所は固く怒張したラーハルトの分身をゆっくり飲み込んでいく。指よりも更に増した質量で裡がひりつきながら拡げられていき、
こちらも息を吐きながら侵入してくるものを受け入れる。
「っ、……キツく、ないか……?」
苦しげなラーハルトの問いかけに、首を縦に振って笑みを向けた。侵入してきたモノはすっかり固くなっていて、その上ご無沙汰な女が相
手ではきっと早く出したいだろうに、気遣ってくれる優しさが嬉しい。
「平気……動いて……」
長めのものが全て裡に収まったことを確認し、ひりつきも構わず誘うと、男の両手が腰を掴んで、昂ぶったものをぶつけ始めた。長さがあ
る分、一度のストロークも長いため、擦り上げられる範囲が広くて刺激が強い気がする。声を抑える余裕はなくなり、突き上げられるたび
に嬌声を上げてしまう。
「あ、やっ、ん、あんっ、あ、」
「っ……
……!」
見上げた男の顔は苦しそうで切なげで色っぽい。獣みたいな息遣いと押し殺した雄っぽい声に、身体の奥が熱く疼いた。地上最強の槍使い
にこんな表情をさせているのが自分だと思うと堪らなく興奮する。身も心も全部この人に貰って欲しい。肌のぶつかり合う音が思考を邪魔
する。
突き上げられて悶え続ける身体を、ラーハルトの腕が抱え上げ、座って抱き合うような体位にされる。後ろに倒れないように両腕と両足を
男の身体にしっかりと絡めてしがみつくと、そそり立つ男の証がより深くまで裡を貫く。
「あ、あ、だめ、あんっ!」
下からの突き上げで、ただでさえ長い彼の分身が奥の奥まで突いてくる。律動がどんどん激しくなってしがみ付いているだけで精一杯だ。
頭の中はずっと火花が飛んで、パルスで視界がチカチカする。体の奥を責め立てる強烈な快感に、軽い絶頂を何度も繰り返す。
「喉……枯らしてやるッ……!」
「や、ああっ!!ひ、あ、あ……!っっ……!!」
頭の奥までびりびり痺れて思考が蕩けていく。ずっとこうして繋がって、与えられる快感を受け止め続けたいという欲求しか考えられな
い。
「あ、あ、ラーハルト、すごい、こん、な……んぅ、」
唇をキスで塞がれて、下から突き上げられながら深く舌を絡め合い、唾液が顎を伝い落ちる。胸の奥に居座り続けた苦しい恋の欠片が溶け
て消えていく。もう苦しくない。私を抱いているこの人が、泣いた分だけ愛してくれる。勝手に溢れ始めた涙は悲しみではなく、解放され
た喜びによるものだ。泣き出した私に気付いて動きを止め、気遣うようにこちらを見つめる男の頬にキスして、涙を手の甲で拭って笑っ
た。
「ね……もっとして……今、すごく幸せ……」
続けるように促すと、再びベッドに倒されて体中にキスされた。顔や首、鎖骨、胸、肩や腕まで口付けられて、全身から愛されている実感
を得る。再び激しく突き上げられ、しがみついたまま快楽に浸る。
「……愛い事を……!」
「あん……ああっ!……!」
奥を強く突かれる度に、快感が電流になって脳内を麻痺させていく。絶頂の痙攣が止まらない。このまま溶けてしまいたいほどの快楽の海
に溺れていく。内壁を長い彼の分身が擦り上げて、擦れた部分が火花を散らしているかのような甘い痺れをもたらす。
「く……ッ出すぞ、」
「あ、あ、そとぉっ、そ、とにっ、あん、ああっ、……!っあ、あ……!」
「……っう……!」
「ひんっ!」
呂律が回らずに絶頂しながらかろうじて伝えたリクエストは、ぎりぎり彼に伝わった。奥を貫き続けた彼の分身がずるりと引き抜かれ、そ
の刺激ですら再び軽く達してしまった私の視界に、吐き出した白濁を自分の掌で受け止めている男の姿が映った。こんな所まで気を遣わな
くても、お腹にでもかけてくれて良かったのに。普段は厳しい事ばかり話す彼の優しさが見えて、満ち足りた気持ちで息を整える。
「ラーハルト……」
「……拭くものを貸せ」
「ん……そこのキャビネットのタオル使って……」
出したものを落とさないようにキャビネットからタオルを取り出して手を拭っている男の後姿をベッドから眺めながら、幸せを噛みしめ
る。彼の宣言通りに喉が枯れているけど、もうしばらくベッドに居たい。目を閉じて行為の余韻に浸っていると、ラーハルトがいつの間に
か下だけ履いてベッドに戻ってきた。
「おい、大丈夫か……?」
「ん。すごく気持ち良かった……」
動かない私を心配したのか、覆い被さって問いかけてきた声に素直な感想を伝えると、少し汗ばんだ筋肉質な腕に抱き締められて胸がきゅ
んとする。
「……
」
「ん……?」
「お前……いつ家にいる……?」
私を腕に抱いたまま、ラーハルトが髪に顔を埋めた状態で問いかけてきた。息が髪に当たって温かい。こんな質問をするってことは、家に
来てもいい日を知りたいってことだと思っていいのかな。
「スケジュールをあとで渡すから……いつでも来て」
答えた私の言葉に、ラーハルトは短く、わかった、とだけ言い、頭を何度も何度も撫でて、苦笑して言った。
「酷い声だ……」
「……誰かさんがいっぱい啼かせてくれたからでしょ」
見上げた男の顔は優しく穏やかで、けれど敬愛する主へのそれとは違う目をしていて、その目を向けられているのが自分だけだと思えば思
うほど、強く彼の愛を感じて。
「ラーハルト」
「なんだ」
Melting Brain
「大好き」
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