この世界で初めての恋人さんは恋愛云々は奥手だけれど、どうやら一度火が付くと止まらなくなるらし い。本能的に動いちゃうのだ。というのは、キスは勿論あっちもそんな感じだった。文字通り食べられるという表現が相応しい。

いきなり全部見せるべきじゃなかったかな、とは思う。でもお互い限界だったし長いこと会わない間にフラスト レーションが溜まり溜まって爆発しそうだったからいいか。あれでお預けにしてたらもっとすごい夜が後々きそうだったし。

なんて仏心を見せたのがまずかったのか、それとも軽傷で済んだと喜ぶべきなのか、初めて肌を重ねた夜はとんだブラッディースクライド が炸裂したため(おっとお下品)、私は翌日朝から早速腰痛をホイミで治す羽目になった。今後は3回までってきつく言い聞かせよう。あ んなペースでされたら衰弱死する。私の体力は人並み以上とはいえ彼ほどチートじゃない。

で、こんなことを考えている場所というのは2回目の行為の後、すなわちベンガーナのアパートの狭いベッドの上、ダーリンの腕の中だっ たりする。前回は夜、今回は朝からダーリンがハッスルなさった。まだあれから二日しか経ってないのにお元気ですこと。付き合い始めっ ていっぱいしたくなるよね。わかるわかる、でもねダーリン、寝惚けてるところを襲われるとこっちも流石に焦ります。

「嬉しいけど、せめて起きてからにしよ?寝惚けてる時はびっくりしちゃう」
「すまん。つい……我慢できずに……」

そりゃあ女として愛されてる気がするから求められるのは嬉しいし、恋人とするのも勿論好きだ。でも二人で幸福感をまったり感じるのも いいと思うんだよ。ベッド一つしかないから、くっついて寝てればムラムラきちゃうのもわかるんだけど。胸板に額をぐりぐり押し当て て、ヒュンケルがしどろもどろに謝る様子をちょっぴり楽しんで、ふと思い立ち話題を変える。

「ところで前から聞きたかったんだけど」
「?」
「いつから私のこと好きだったの?」

肩口にこてんと首を乗せて尋ねたら、ヒュンケルは一瞬固まり、それからみるみる赤くなって目を逸らした。あ、今の可愛い。ダーリンた らキュートな反応だこと。

「そ、そろそろ起きないか」
「えー教えてよー」
「勘弁してくれ……!」
「だーめ。言ってくれるまで逃がさない」

逃げようとして身を起こそうとしたダーリンの肩に抱きついて抑え込み、ぐっと盛り上がった厚い胸を指先で撫でて固い感触を堪能する。 ちなみに成り行きとはいえ魔王軍との戦いに巻き込まれて以降、私は色白モヤシッ子に一切興味がなくなった。というか自分自身がそこそ こ強くなってしまったのでモヤシ相手に胸がときめかない。その点、色白でもヒュンケルは意外にガチムチ系だから体型的にはどストライ クだ。好きになる前からイイ身体してるなーとは思ってました。

ヒュンケルは私が離す気が無いことを悟って諦めたのか、額に手を当てて頬をちょっぴり赤くしたまま、ぼそぼそと口を開いた。やだもう ほんとカワイイ、イケメンのテレ顔ってやっぱりオイシイよね。

「その……バルジ島を出て……すぐに、だな……」
「出てすぐ、って言うと同行させて貰った時?」
「……っもういいだろう……!?」
「いや、え?ちょっと待って、それかなり最初の方でしょ!?」

だってバルジ島出てすぐって、出会って10日かそこらくらいのタイミングだ。確かにあの時の彼は浮き沈みが激しくて、私も結構気を遣 いながら明るく接していたような気はするけど、もしかしてそれで?じゃあもしかして、またねーって別れた時に寂しそうだったのは好き な子と一緒に居られなくなっちゃったからか?てっきりラーハルトと一悶着あったあたりで、ジェラシーからの自覚パターンだと思って た。予想以上に早いタイミングだったことに驚いていたら、ヒュンケルが居た堪れなくなったのか、突然私をがばっと腕の中に抱き込んで きた。

「――ずっと好きだった。 だけを見ていた」

太い腕にガッチリ抱き込まれて苦しいとかちょっと力強すぎとか色んな思いが頭を巡ったけれど、ああ、なんて口説き文句!照れ隠しにき つく抱いて頬を染めて囁かれたらなんでも許してあげたくなる。これがイケメンのトラップか。なんかこっちまで恥ずかしくなっちゃう。 思いっきりぎゅうぎゅう抱き締められて、私も負けじと抱き返そうと思ったけれど腕がホールドされているのでできない。

「そっかー。そんなに前から好きでいてくれたんだ」
「勘弁してくれないか、頼む……!」

ヒュンケルは本気で恥ずかしいらしくて私の頭を抱え込んで上げさせてくれない。多分、耳まで赤くなっているに違いない。無理矢理見る のは流石に可哀想だから大人しく抱かれていると、私の髪に顔を埋める形になっているヒュンケルがぽつりと問いかけた。

「……そっちこそ、どうなんだ」
「んー?」
「つ、つまり…… は、いつから……」

少しだけ顔を動かして目線を上げて表情を伺うと目を泳がせながらもごもごと何やら呟く恋人殿がいた。いつからオレのことを好きだっ た?って聞きたいんだろうけど、その台詞自体が恥ずかしいらしい。質問が尻すぼみになっていく。本当にシャイだ。見た目男前でも中身 が乙女なので、つい困らせたくなるのはお許しいただきたい。だって照れて困る顔がとんでもなくキュートでどうにでもしてあげたくなる くらい可愛いんだから。

「……100回キスしてくれたら教えてあげる」

抱き込まれたまま厚い胸に唇を寄せて、吸い付いて優しく歯を立てる。ヒュンケルの腕が外れて、微かに赤くなった肌を舌先でちろりと舐 めれば見上げれば予想通りに真っ赤になって口元を隠している彼の顔がある。その顔を見るのが好きだなんて言ったら悪趣味だろうけど、 これも愛ゆえの事と思って許してね。

さあダーリン、チャレンジスタート。



Kiss Me Baby






付き合い始めのラブラブバカップル。
舞い上がり気味の兄さんと兄さんを可愛がりつつ手綱を握る夢主。


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