ブログに書いた没ネタ@です。
残骸なので完成しませんし書きかけのまんまです。
どうしてもこの場面だけ書いてみて!というのがあったら、リク次第では書きますが、せいぜい掌編程度にしかなりません。

概要
ゴメちゃんが頑張ってバーンと和解→夢主がバーンの下で人魔共存に向けて働く、というもの。
この場合夢主は最終決戦にもついていきますので、長兄は二人っきりになるタイミングが取れずに告白できてません。(なんと言うヘタレか)
夢主は黒の核晶云々の件でバーンに度胸と要領の良さを買われて純粋に「ウチで働かん?給料ええで?人間一人おった方が信頼するやろそっちも、どないやろ?」と スカウトされ、夢主もバーンの魔力と知恵があるなら元の世界に帰る事が可能かもしれないと考え、3年の出向を了承します。
魔界はロモス・パプニカ以南に浮上、“旧魔界大陸”と呼ばれる事になります。

夢主が関わる仕事は以下。

・魔界の痩せた大地の土壌改善及び食糧事情の改善
・人間と魔族の交換使節団派遣
・パプニカと旧魔界大陸にまたがって起こった災害の対処(パプニカの端っこと旧魔界大陸の端っこに海峡があり、そこで大竜巻発生という設定)

また、夢主のサポートとして2人の魔族のオリキャラが出ます。

ガイウス:魔族の壮年男性。元々魔王軍の将校だった。サポートとは名ばかりの夢主の護衛(あくまで出向なので、夢主に何か危害を加えられると人魔共存が危ぶま れるため)。
アイリーナ:魔族のクールビューティー美女。ザ・秘書。敬語。

このルートだと長兄はいつまでも告らない&夢主も友達以上恋愛未満で「なんか私の事好きっぽかったけど、言ってこないしめんどくさいからほっとこ」と言うドラ イなスタンスです。悪魔の目玉をスカ●プ並にビジネスにヘビーユーズする夢主を書きたくて書き始めたら予想以上に長くなり、長兄がずーーーーっと片想いのまま で男気を見せるまで時間がかかりすぎるので、テンポ悪いな、と没にしました。ラーハルトとはなかなかいい友人関係になるんだけどな。
無理無理こんな長いの書けへん、書けなくは無いけどくっつくまでにアホほど時間かかるしやな…ってもんです。



1シーンしかなく地の文章すら書いてない所もありますが、それでもよろしければ以下から、どうぞ!!

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*交換使節団の最後の部分*

アバンさんとの再会から1ヵ月後。人間側からは1月もかからないうちに合意の返答があり、話は一気に進んだ。
人間側でも同様の問題について頭を悩ませていたため、今回の提案を機に各国も合意に踏み切ってくれたとのこと。
話が止まったらアバンの使徒を引っ張り出して説得してもらうつもりでいたので、すんなりと合意が進んだことは大きな成果だ。

使節団の編成は、老人3名、若い男性5名、若い女性5名に子供を8名の20名。子供を多くした理由は後にわかる。
人間側は学者と標準的な教育を受けた人間で結成されている。魔族側は万一に備えて攻撃魔法を封じる措置を施した。
ちなみに、若い男性には騎士や兵士だったものもいるので、事前に双方に不利益を及ぼす行為をしないことを誓わせている。
老人はちょっとズルをして、農学者とコネがあるものや、農業に携わっていた者を優先して選んだ。
当初の目的自体が農学者の派遣を円滑に進めるためなのでご容赦願いたいところだ。

「はーい皆!列を乱さないでー!」

今回、旧魔界側の交換使節団を受け入れたのはロモスだった。この国は国王の人望が厚く、国王自身が悪しき習慣を変えることに前向きで、旧魔界からの距離も近 い。
但し大人数でルーラで行くのはちょっと辛いので、ロモスにはクロコダインが、旧魔界側では私が転送魔法人の周囲で待機している。
そしてその転送魔法を使うのは強大な魔力を誇る私の雇い主、バーンだ。
ごめんね使っちゃって。あんたほど器用に精確に大人数に対して転送魔法が使えるヤツがいないもんですから。

「クロコダイン、そっちはどう?」
『問題ない。いつでもいいぞ』
「了解!バーン様ーお願いしまーす!」

悪魔の目玉で通信して向こうの状況を確認した私は、バーンに向かって手を振った。

「都合よく使いおって……まあよい」

バーンが手をかざすと、魔法陣の上にいた魔族達の姿が消えて、代わりに人間達が現れた。
さあ、ここからが本番だ。


「ようこそ、旧魔界へ。」

**


*大竜巻・序*

様。パプニカより火急の用件で使者が来ております」
「……はーい……」

「………………はあ!!?」


パプニカ南部の港町コーラルドと、対岸の旧魔界のオステマ半島を二つ巻き込んで大竜巻が襲ったという。
甚大な被害を受けたため救援が必要だが、旧魔界側の商船も一緒にパプニカにて損害を受けたとのことで手出しできないため、あわせて支援を要請してきたのだ。

「すぐに承認を頂くので、そのままお待ちを」

いちいち決済貰うのに謁見する時間は効率悪くて勿体ないし、悪魔の目玉で会話が出来るなら時間短縮のためにも謁見省いて悪魔の目玉でいいですか?と提案した らあっさりOKが出たので、急を要するときは専らこっちで会話している。作業効率を理解してくれる上司で助かった。

「バーン様、お休みのところ失礼致します。 です」
『どうした』
「領地の境界上で大規模な竜巻による災害が発生しました。死傷者多数で被害規模は現在確認中、旧魔界と人間側の双方に被害が出ております。救助隊派遣の許可を ください」
『良かろう。至急隊を編成し現地へ送れ』
「かしこまりました」


「上の許可が出ました。こちら側もすぐに救助隊を送りますので、書状を持っていってください。すぐに準備します」
よ』
「は。こちらに」
『そなたも現場に向かい、被害状況を確認し明日の正午までに報告せよ』
「かしこまりました」

*大竜巻・中*


「……アイリーナ」
「はっ」
「孤児のリストアップも必要だわ。悪いけど、優先事項に入れておいて」
「!……はい!」

この仕事、予想以上にキツイ。
ハリケーンカトリーナの時もニューヨークで似たような事が起こったんだっけ。
災害でやらなきゃいけないことって今どこまで行ってたんだったかな。

「……食料と医療と、被災者のメンタルケアと……暴動の鎮圧……他になんだっけ…………あーインフラの整備か……」

ストレスで胃に穴が開きそうだ。



死者の亡骸は直に500人に達する。多くが貧民達で、中には生まれて数ヶ月の赤ん坊もいた。
疫病の蔓延を防ぐために遺体は順に火葬にすることに決めたが、死体の中に子供の手を見つける度、私は夜中に吐いた。
瓦礫の下からは未だに怪我人や死体が出てくる。

とはいえ、災害発生から一週間以上経過した今、人間側は死者の捜索をするだけだ。
生存者が時々見つかるのは旧魔界側で、魔族は体力があるものだと生きていたりするのだ。
それでも重傷が原因で、救出後に死亡することもあり、現場は瓦礫と砂煙と死臭で異様な空気に満ちていた。
キツイ仕事だ。本当に。
惨状を目の当たりにするのも、それを思い返しながら資料をまとめて報告するのも。
旧魔界側と人間側の境界で起きた災害だから、調整役の私が狩り出されるのはわかっていたけれど、通常業務をしながら現場の指揮は辛い。
疲労に加えて精神的な負荷で眠れない日々が続いて一週間。いよいよ倒れるかなと思った矢先、現場のテントの幕をあげて入ってきたのは、久しぶりに見る顔だっ た。

「ラーハルト…………うそ、なんで……?」

顔はいいのに無愛想な戦友。ほんの数ヶ月前まで最前線で共闘していた竜騎衆の男。

「パプニカ王妃からの伝言を届けに来てやったのだ。ついでに忙殺されてへばっているのを笑いにな」

相も変わらず気遣いもへったくれもない彼の言葉が、妙に懐かしくておかしい。酷い台詞なのにほっとした。

「……ぷっ、ははっ……!」

急に笑い出したのが気に触ったのか、ラーハルトは眉を顰めて不機嫌そうに私を見ている。が、こんな程度で怖がる女でもない事は彼も知っているし、私も遠慮なん てしない。

「うそつけー。ダイに言われて来たんでしょ、“ さんが来てるって!でもおれ行けないし、ラーハルトお願い!用事のついでに様子見てきて〜!”ってとこじゃないの?」
「……フン」

予想できるやり取りを口にしてやれば、案の定おおよそ当たっていたのか、彼は決まり悪そうに眼を逸らした。
ああ、そう。こういうのが必要だったのだ。寝る間も惜しんで働き続けるこの日々に、気兼ねなく絡める相手が欲しかった。
ささくれていた気持ちが少しだけ和らいだ気がする。
大丈夫、私はまだやれる。

「折角だけど、この後すぐに魔宮に戻らなきゃなんだわ。落ち着いたら顔出すって言っといてくれる?」
「大魔王などのためによく働くものだ」
「仕事だからね。手は抜かない」

そう。これは今の私の仕事。だからやりきるしかない。為すべき者が為すべきを為す。
私はこの場所の責任者で、みんなは私の指示で動いてくれているのだから。

「……無理はするな」

珍しくラーハルトが他人を心配する言葉を発したので、一層元気が出てきた。
この男が私を心配するなんて、それくらいレアなのだ。

「ありがと。正直、あんたの顔見てちょっと安心した……予想以上に参ってたみたい」

資料をまとめ終えると、私はさっさと準備をして彼と共にテントを出た。

「来てくれて嬉しいよ。でも、もう行かないと。皆によろしくね」

この件が片付いたら、本当に一度みんなのところに顔出しに行こう。
あの温かい優しさが急に懐かしくて、恋しくなってきたから。


***



*大竜巻・終*

災害発生から3ヶ月、旧魔界で働きはじめてから実に8ヶ月後。
コーラルド港・オステマ半島の大災害はようやく被害の算出と範囲の把握が終わり、後は必要な処置を都度判断しながら
行っていくよう軌道がのった。 必要な事項は全て対策マニュアルを作成して部下に指示してあるので
、イレギュラーのみ悪魔の目玉方式で私が決済を下し、私の権限を越えるものに関してはバーンに決済を貰う。
必要な物資の補給が途絶えなければ、後は現場の者達でどうにかなりそうだと報告し、ようやっとバーンから現場指揮の交代と、
3日間の休暇の許可がでたので、その夜私はようやく10時間以上ぶっ続けで眠ることができた。

といっても、部屋の中まで仕事を持ち込んで働きまくっていた私の部屋は書類が散乱し、寝るのだって風呂も入らずベッドに
ぶっ倒れたという情けない状態だったんだけど、今の私は疲れ切ったOL状態なので仕方ない。

「…………うー」

もそもそとベッドから起きた私は、隈の残る顔をどうにかするため朝からお風呂に入り、久方ぶりに朝からダンスの練習をして、
もう一度汗を流してしっかりボディケアをして、まともにお洒落をした。
やっぱ仕事優先するとダンスも料理も出来ないしでストレスが溜まる。
今日は朝食を終えたらドルチェ作ってみんなの手土産に持っていこう。

そう言えばこの魔宮に来てから料理をするのはこれが始めてかもしれない。
 旧魔界の大陸は肥沃とは言えないため、未だに収穫できる作物は少ない。それでも植物というものは強く、
最近の私のお気に入りは魔界でならどこでも採れると言われている、ガーネットベリーだ。
地熱で育つ植物でそれなりに栄養価も高い。いつも生かジャムにした状態で出されるのだが、ちょっと工夫してみよう。

ベリーを煮詰めるところまではジャムと同じだが、このベリーソースをパンナコッタに使ってみようと思うのだ。
パンナコッタと言うのはイタリアン・ドルチェで、私はこれまでこの世界で同じもの、或いは似たものを見かけたことはない。
珍しがられてウケがいいんじゃないかと思う。
ガーネットベリーソースは香り付けにこれまた魔界産のブランデーを混ぜてある。産地が同じものの方が味が馴染みやすい。
ついでにアメ細工風に、砂糖でもっと濃く煮詰めたものを固めてハート型のリングにしておく。
久しぶりの調理に上機嫌でミルクを煮立てて、こちらにも少しだけブランデーを混ぜて香りをつける。

次に漉し器でゆっくりと漉しながら数個のガラスの容器に注いで、トレーに乗せたものを薄い鉄製の蓋付きの箱に入れて、
ヒャドで箱ごと凍らせ、1時間放置。氷が解けたら中身を取り出せば、ほどよく固まったパンナコッタができている。
これにガーネットベリーのソースをかけて、すっきりとしたミントのような香りのハーブと、ガーネットベリーのアメ細工を飾りに乗せて完成。

「よーし!さて味見……」
「ほう、これは美味だな。面白い菓子を作ったものだ」
「……えーっと」
「ふむ、赤いソースはガーネットベリーか。白い部分は牛の乳だな」
「あのですね」
「この輪はアメ細工か。人間の食べ物は興味深い」
「とりあえずですね」
「そなたにこのような特技があるとは思わなかったが、いい腕だ」
「ええ、光栄なんですけど、バーン様。いいから仕事してください」

大魔王がこんな所でなに油売ってんだ。私は非番だからいいけど、あんた今日仕事あるでしょうが。
仕事しろ大魔王。働いてくれ。

「なんだ。つれぬな」
「私は今日は休暇中、非番です。これは今から友人の手土産にするんで」
「勿体ない。余のために作ってくれたのかと期待したのだぞ」
「帰ったらもっと色々作ってあげますから、今日は勘弁してください」


***






*長兄、振られるの巻*

「オレはお前を愛している。…例えお前を幸せにするのがオレでなくとも、想いだけは伝えたかった」
「―――ごめん。気持ちは受け取れない」


「私の振る舞いがあんたを勘違いさせちゃったなら、謝る。けど、今のあんたの気持ちをこのまま受け取るのは、違う気がする」
「……?」
「あんたの私に対する気持ちは愛じゃない。私が甘やかしたから、なんでも受け入れてもらえるような気持ちになっちゃっただけ。
だから今だって最後まで傍にいる覚悟もないのに愛してるなんて言えるの」
「……違う……!」
「じゃあ何で幸せに出来ないなんて言えちゃうの?好きだけど一緒に幸せになれないから愛せないなんて、
自分が言われたら嬉しい?悲しいと思わない?」
「っ、それは、……」
「会いに来てくれたのは嬉しいけど……素直に喜べないよ」
「……友達でいよう。……私の秘密、あんたに全部教えるから……」





「愛じゃない、か……」

的確な表現だ。 はそういう女性だと知っていたくせに、また甘えた。
だから駄目なのだ、オレという男は。なんでも受け止めてくれると思い込んで、身勝手な想いをぶつけて傷つけたことに気づかされた。
愛想を尽かされたと思った。しかしオレの愛には応えられないと告げた彼女は、友人として関係を続けたいからと自分の持つ秘密をオレにだけ打ち明けてくれた。
信じられないがここではない世界からこの世界に来てしまったこと。
まだ踊りを愛していて夢を諦めることが出来ないこと。
夢を叶える為の援助を得るために仕事をしているということ。
確固たる意思を持って世界の不条理に挑む彼女の強烈なまでに輝く姿は、例え掌で目を覆い隠しても僅かな隙間を通して光を見せ付ける。
夢のため。
たったそれだけで彼女はここまできたのかと思うと、眩暈すら覚える。
自分が何故、どうやってここに来たのかわからないまま、彼女は孤独に世界と戦っていた。
一言も泣き言を漏らさず、ただ方法を模索して、手探りでも光を見つけては前に進んでいた。誰にも何も話さずに、胸の内だけに全て押し込めて。
今なら、出会ってすぐの頃の彼女がオレの頬を打った理由がわかる。
帰る方法を探しながら必死で生き抜いているというのに、自分よりも戦う力のある男が死にたいなどと泣き言を言っているのだ。
客観的に見るとあの時のオレは本当に情けなかった。腹が立っただろう。
彼女を愛するには、オレは気持ちの強さが足りなかった。暗闇を切り裂いて進む彼女の手を掴む気持ちが。
一緒に歩かせてくれと言えるだけの強さが無かったのだ。振られてようやく気付いた。彼女の放つ光の強さと、その光をまだ見つめていたいと願う自分に。

が好きだ。愛している。これ以上無いほどに。 どうしようもない。エイミのことをどうこう言えるレベルではない。
振られて一層想いが強くなるなんて、自分はどういう精神構造をしているのだろう。エイミに自分を諦めてくれなどとはもう言えない。
オレ自身が という女性を諦められなくなっているのだから。
水平線に日が沈む様子を眺めながら、赤とオレンジに彩られた海を見つめる。波打ち際を歩けば、足元を冷たくも柔らかい波が包んだ。
手の中のメモ書きを開いて目を通す。 がくれたものだ。
もっと早く渡すつもりだったがオレの気持ちを知っている以上は気を持たせる真似はしたくなかったと言って、去ろうとするオレに手渡してくれた。
筋肉や骨の再生に有効な薬草や療法が記されている。彼女はオレの身体のことをずっと気に掛けてくれていたのだ。
眠る暇もないほどに忙しいのに。
完治せずとも、平和が戻ったならば剣を振るえなくても良いと思っていた。

それでも、この一枚の紙が彼女とオレを繋いでくれるなら。
拳を握る。握力も筋力も落ちている。これでは彼女の手を掴んでも、簡単に振り払われてしまうだろう。
もう一度メモ書きに目を通す。チャンスだ、と言われた気がした。戦士のくせに何を座り込んでいるのだ、と。

「……おかげで目が覚めた」

彼女の手を掴める強さが欲しい。 心の底から諦めたくないと思える、最初で最後の恋なら。


*** この後兄さんリハビリ&一念発起して再アタックしてきます。