注:このお話はさくら屋一葉の北崎あさみさまの連載の登場人物によって構成されております。
初めての方は本家のお話をお先にどうぞ。
*時空の治癒者、愛の言葉のパラレル雰囲気。
*死んだ人、結構生き返ってる。
*子供達も登場。
*バットとリンは大人。
*とにかく、気にしないが一番いい。
ついでに、シュウの目は見えます!
砂漠の魔女と拳王様と南斗白鷺拳伝承者の嵐の運動会
「ちゃーんッ!!」
ああ、何か来た、とは思う。
この場合、夫が馬鹿な考えを持って、自分に近づいてくることしか有り得ないが、は完全に無視した。
横にいた息子は、母が完全無視を決め込んでいることを知っている。
父が泣かない限り、何も言わないでおこう、と息子は決め込んだ。
とにかく、シュウに対して結構厳しい家族である。
(に言わせるとシュウが悪いらしい)
「ちゃーんッ!!大変だ!!」
「ケンはここにいるし、シバは勉強中。トキもレイも転んでないし、ナントとホクトは寝てるから」
「ユメはここ!」
ケンの側で、やっと産まれた女の子であるユメはぐっすりと眠っていた。
まだ乳飲み子である。
可愛らしい寝顔にシュウはメロメロだった。
「ユメちゃーん、パパですよー」
シュウがそんなことを言うと、ユメは泣き出した。
「はッ!?何故だ!?」
わぁわぁと泣き出したユメをが抱き上げた。
ピタリと泣き止むので、シュウの謎は深まるばかりである。
部屋の隅に行って小さくなっても、元が大きいので小さくは見えなかった。
「もう、今寝たところだったのに。起こさないでちょうだい?」
「ちゃん……私はきっと、ユメちゃんにまだパパだと思われていないんだよ……」
「それは知ってる」
「ガビーンッ!?」
シュウは床に倒れ込んでしまった。
毎回こんなことを繰り返すのだから、父の体力は凄いな、とケンは思う。
は、そろそろ床が駄目になりそうだ、などと現実的なことを考えていた。
「で、シュウ。用事は何なの?」
再度眠りについた娘を籠に戻し、はシュウに近づいた。
床に張り付いているシュウは、泣く泣く顔を上げた。
「うう、ラオウが……」
「ラオウが、何?娘を潰したとか、そう言った話じゃないんでしょ?」
「うう、ラオウが………運動会するって言うんだ!!」
「はぁ!?」
は驚いた。
「私達も混ざりたいじゃないかーッ!!」
シュウは泣きながら叫ぶ。
そして、1発殴られた。
リュウに連絡を取ったケンは、詳しい話を聞いた。
それは、偶然の産物。
たまたま、ラオウの元へ昔の部下がやって来たらしい。
そして、子供達の成長を褒めたという。
産まれたばかりの次男の話を初め、ラオウは次々に子供達のことを語ったという。
昔の部下である少女は、ラオウに言う。
「子供達がこんなにたくさんいたら、運動会でも出来ちゃいそうですよねー!」
魔女さん(のことらしい)のところにも、いっぱいいますしぃ、とは言った。
その言葉に、ラオウは大反応したようである。
「運動会か………」
「拳王様?」
「拳王と呼ぶなと何度言えば分かる」
「すいません。じゃあ、ラオウ様」
何かちょっと違和感だなーとラオウは思いながら、太い腕を組んだ。
そして、を見る。
「よ、頼みがある」
「はい?」
「皆を集めよ」
「はぁ?」
「運動会を開催するッ!!」
「リュウガさーん、ラオウ様が運動会開催するそうですよーッ!!」
は、すぐさま外に向かって叫んだ。
外には、恋人であるリュウガがいる。
ちょっと馬を繋ぎに行っていたリュウガは、ビックリして走ってきた。
「いい走りっぷりだな、リュウガ!」
「お褒めにあずかり、光栄でございますって、あの、拳王様?運動会とは……」
「拳王と呼ぶなと何度言えば分かるのだ、うぬ等は」
「すみません。では、ラオウ様。その、運動会とは……」
「リュウガさん、知らないんですかー?徒競走とか、玉入れとか、応援合戦とか、色々あるじゃないですか!」
「内容を聞いているのではないのだがッ!!」
リュウガは、のほっぺたをつねる。
「ひゃって!!運動会ひょわって、きうからーッ!!」
「とにかく、近日中に人を集めよ!!」
という、アホのような流れだったらしい。
その知らせが、ついにシュウのところまで来たというわけだ。
ケンはため息をついた。
はぁ、と。
こういった何ともいえないイベントごとは、シュウやジュウザやバットあたりは大好きだ。
ジュウザだって、急いでこっちに向かってきていることだろう。
「ケーン!!」
「どうしたの、父さん?」
「サウザーが来るというのだ!あいつが参加するとなれば、ただ事ではすまんぞ!!」
何をするつもりなんだ、サウザーとうちの父は!!とケンは思った。
「うちは誰も出ないわよー」
がカルテのボードでシュウの頭を殴った。
すぐさま大きなたんこぶが出来上がり、その場にシュウは撃沈する。
「で、出ない!?」
「出るわけないでしょ?ユメはまだ小さいし、ナントもホクトも小さいのよ?」
「ケ、ケンとシバだけでも!!」
床を這って、シュウはの元へ来た。
椅子に座っている彼女の膝に縋りつく。
何とも怪しい光景の出来上がりだ。
「駄目。ケンは医術の勉強中だし、シバだって色々勉強してるの」
「そ、そんな!!」
「そんな顔しても駄目よ。出たいなら1人で出なさい」
1人。
家族がいるのに、1人。
孤独な中年サラリーマンのように1人ぃ!!??
シュウは、その場に倒れ込む。
自分が1人になるなど考えられない。
こんなに素敵で可愛くて最高な奥さんと愛の結晶達がいるのに、1人!?
「ひ、1人で出るくらいなら………」
はカルテに目を通した。
夫のことなど放置プレイに限るのだ。
「1人で出るくらいならーッ!!」
「あ、父さんが珍しく逃げた!!」
ほとんどは、泣いて部屋に閉じこもるパターンが多いのだが、時には逃げ出すらしい。
ケンは驚いて外を見ていた。
父は、遠くまで走っていっている。
「母さん、大丈夫かな?」
「大丈夫よ、迷子札なら上着とズボンにちゃんと縫い付けてあるから」
用意周到なのか。
夫を何だと思っているのか。
ケンは、夫婦って難しいな、と思うのだった。
何だかんだで、ラオウ一家はシュウの村へやって来た。
ギャラリーやら何やらが異様に多いのは、気のせいか。
拳王を辞めたはずなのに、何故モヒカンがいるのか。
不思議な光景をは見ていた。
「、邪魔するぞ」
「普通の用事なら構わないけど、運動会はしないわよ?」
「運動会をしないならば、何をする!?」
コイツ、アホか。
はそう思った。
「そうだぞ、。ここまで来て逃げるなど、北斗の男のするべきことではない!」
振り返ったそこにいたのは、トキだった。
息子ではなく、名前をもらったその人である。
「トキ………」
「運動会とはいいものだ。昔、北斗の道場でもよく開かれていた」
「それ、本当に道場なわけ?つーか、リュウケン頭おかしくない?」
「あの頃、ケンシロウは走れば注目の的。玉を投げれば、注目の的。本当によかった……」
弟LOVEのトキは、過去のことを思い出して妄想に浸っている。
何でそんなに弟が好きなんだ、とは思った。
「ラオウに負けじと懸命に走る姿に、何度血圧が上がったか!!」
「お前だけだよ」
は冷たく言い、この妄想男をどうにかしようと思った。
どの経絡秘孔を突けば、一番結果が出るのか。
そう考えていると、一台のバイクがやって来た。
また余計なのが……とは思う。
そのバイクは、の横を素通りして、ケンの目の前で停まった。
「よ!元気にしてたか、俺の嫁さん!!」
「ジュウザ!!」
「ちょっとーッ!!誰か、あの変態を止めて!!警察呼んでーッ!!」
息子に魔の手が迫っている!
は、凄まじい速さでジュウザとケンの間に入り込んだ。
「産後の女がすることじゃねぇだろ?」
「アンタこそ!うちのケンに何吹き込んでんの!!」
「何も吹き込んでねぇよ。結婚するって約束したもんなー?」
の横から顔を出して、ジュウザは後ろにいたケンを見る。
ケンは嬉しそうに微笑んでいた。
コイツ、殺すッ!!とは本気で殺害計画を練るつもりだ。
「結婚を誓い合ったのならば、仕方あるまい………」
落ち着き払った声がした。
は、今にも血管が切れそうだったが、その声の主を見る。
「ケンシロウ………」
「久しぶりだな、、ケン!シュウはどうしたんだ?見かけないが」
話を逸らしやがったーッ!!
は限界寸前だ。
何でこんなことになってしまったのか!
「シュウなら、逃げ出したのよ」
「逃げた!?シュウともあろう男が……何があったんだ!?」
この現状を見て、何もないと言えるのか。
モヒカンと家族と共に現れたラオウ。
(腕にはキラを抱いている。は相当困惑した顔だ)
弟萌えなトキ。
少年に結婚すると約束しているジュウザ。
血管の切れそうな。
「運動会は中止よ!何が何でも中止!!」
「魔女さん、そんなに怒らなくても!」
出て来たのは、だった。
リュウガがすでに視線を逸らしている。
アイツ、他人のフリするつもりか!とは思った。
「運動会は、リュウガさんが必ず成功させます!!」
「勝手なことを言うな、ッ!!!」
「頼んだぞ、リュウガ!!」
「はい、お任せください、ラオウ様!!」
いつまで立っても、リュウガはラオウに頭が上がらなかった。
「ごめんなさいね、。ラオウが……」
「どーせ、子供の写真が撮りたいっていうのがラオウの一番の目的なんでしょ?」
「そうなのよねぇ」
止めろよ!とは思った。
は困った顔をして、を見つめている。
妻と乳飲み子だけが集まったこの場で、は疲れを癒すしかなかった。
先ほどから頭痛もする。
これでは、30歳が来る前に死んでしまいそうだった。
「もぉ、ラオウといいリュウガといい!」
「ラオウね、最近の趣味が写真みたいなの」
「それはいいから、何でうちも巻き込むの!?シュウの趣味なんて、娘にスリスリすることよ!?」
そんな趣味なんだー、とは思う。
シュウが変わった男だということは、以前から知っていた。(何故?)
特に驚く様子もなく、はニコニコしている。
「子供達の成長が楽しみで仕方がないのよ。許してあげて」
「そういうことだ、許してやれ」
「命令されて……って」
は見た。
何故、今までいなかったはずのサウザーがそこに座っているのだ!!
「何でアンタがここにいんのよ、サウザーッ!!」
「その叫び方、夫にそっくりだな」
「嬉しくないわ、そんなこと!!」
「それにしても、いい女を作ったな」
「は?」
娘の入った籠を抱えていた。
えー、聖帝が籠を抱える図っておかしくないー?とは言おうとしたが、その前に身体が素早く動いた。
「はーッ。危なかった!」
「チ、もう少しだったのだがな」
「何か言った?」
はサウザーを睨む。
この男、娘を狙っている雰囲気が見え見えなのだ。
「とーにーかーく!!我が家は参加しません!!」
娘の入った籠を握り締めて、は出て行った。
シュウは、数時間すすり泣きを続けていた。
隣に座ったレイが不思議そうに父を見ている。
いつもの光景なのだが、レイにとっては不思議だ。
父が泣いている理由が理解出来ないからである。
「レイ、お前だけだよ、父さんを慰めてくれるのはッ……!!」
「あ、母さんだー!」
「え、ちょ、レイ!?」
息子は、父など放って、母の元へ行ってしまった。
見た目によらず力の強いは、片手に娘の籠を握ったまま、レイを抱き上げる。
母の胸に抱かれて、レイは満足そうだった。
ちょっとどころかかなーり羨ましいシュウは、唇を噛む。
「シュウ、その悔しそうな顔、やめてくれる?」
「悔しいんじゃないんだ!!羨ましいんだ!!」
「本当に、お尻の好きな人ね」
「いや、尻じゃなくって、胸がいいんだけどなー、ちゃーん」
夫の要望など完全無視して、は彼の横に座った。
「貴方、いつからそんなに騒ぐことが好きになったの?」
「いや、別に騒ぐことが好きってわけじゃないんだけどな」
「じゃあ、何なの?」
「いや〜〜〜、子供達がこう、可愛らしい笑顔で走っていたら、素敵だろう!?」
夢見すぎなんだよ、オッサン、とは思った。
2人の子供達なのだから、尋常でないことはすでに分かっている。
ケンやシバは、すでにそこら辺の男ならば軽々と倒せるはずだ。
他の子達も、すばしっこさは普通の子よりも凄まじい。
可愛い笑顔で走って、ゴールするなんてことは、夢の世界の話。
現実は、相手の経絡秘孔を突くか、蹴り飛ばすか、殴るかのどれかだろう。
「………それに、君との思い出を残したいし」
「普通の方法で残せばいいのに」
「ラオウは、こういうイベント事では、写真を撮るというのだ!だから、我が家も!!」
一番の目的はそこらしい。
はため息をついた。
しかし、シュウが思い出を残したい、と言ったその言葉に惹かれた。
家族との思い出として、運動会に参加してもいいのではないだろうか。
危険なことがあれば、自分もいるし、周りには多くの大人がいる。
安全だろう。
ちょっと騒々しいが、目を瞑って。
「分かったわ」
「本当かい!?」
「その代わり、シュウは3ヶ月、トイレ掃除よ」
は、シュウの上から尻をどこうとはしないのだ。
こうして、シュウ一家も参加が決まり、ラオウ主催の運動会は開催された。
一番の目的は、交流会ということになっている。
その為、基本のチームは家族や知り合いだった。
「俺は面倒なことは好まん」
「はあ!?」
ギリギリになって、サウザーが勝手に辞退した。
豪勢な車にパラソルを差して、完全に見物を決め込んでいる。
その目でうちの子見てんじゃねぇよ、とは言いたかったが、サウザーが攻撃を仕掛けない限り何も言わないことにした。
モヒカンに食べ物やら飲み物を用意させて、優雅にサウザーは足を組んでいる。
「サウザーって、ちょっと変わってるよね」
ケンは遠慮がちに言った。
その額には、白いハチマキが巻かれている。
結構可愛らしい様子だ。
これで男の子なのだから、反則である。
「ああいうのを変人っていうのよ」
「母さん、そんなこと言ったら父さんどうするの?」
最近息子のツッコミがキツくなったなー、とは思ったが、いい刺激だろう。
そんな程度で、特に止めることはなかった。
反対側を見ると、赤いハチマキを巻いたラオウ一家が見えた。
一番意気込んでいるのはラオウで、リュウはその後ろにいる。
母親の横で、少し戸惑った様子だった。
さらにその横では、応援団なのかリュウガが学ランを着せられていた。
も同じような格好をしていて、カップルで応援団なのだろうか。
2人しかいないので、貧相に見えるが、それは見た目だけである。
彼等が走り出せば、凄まじいことが起こるだろう。
「ラオウさん、気合はいってるね………」
「家族サービス過剰なのよ」
「うちの父さんもじゃん」
先ほどから、シュウのことはとても話題に上がっているが、当の本人がいなかった。
は叫ぶ。
「シュウ〜〜〜!!!」
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!
シュウは、本当に飛び出してきた。
しっかりと白のハチマキを締めている。
「いやぁ、ハチマキを結ぶのに時間がかかってしまった!!」
「だから、巻いてあげるって言ったじゃない」
夫婦はそんな会話をごく普通にしていた。
ケンにとっては日常茶飯事だが、ギャラリーは「シュウって、ハチマキも結べないんだ!」と思われている。
「ケン!俺と一緒に二人三脚出ような〜!!」
後ろから突然現れたジュウザは、ケンに飛びつこうとした。
それを、とシュウが素晴らしい蹴りで突き飛ばす。
さすが夫婦。
タイミングはバッチリだった。
「ジュウザ!」
「ケン、ジュウザは平気よ。殺してもしなないから!」
「そうだぞ、ケン!ああいった男は、これくらいじゃあ死なないんだ!五車星の分際で、南斗白鷺拳伝承者の息子に手を出そうと……」
珍しく、シュウからどす黒いものが流れ出す。
子供のこととなると、変貌することが時々あるらしい。
「シュウ、落ち着きなさいって」
「そうだね!ちゃん!!」
妻に声をかけられると、シュウは普段の様子に戻った。
ニコニコしながら、息子をグイグイ押して、ジュウザから避けている。
はそんな夫の様子を見ながら、まぁいいか、ぐらいで済ませた。
ハチマキが風に揺れる。
ラオウは、前を向いていた。
「リュウガ、勝ちに行くぞ」
「はい」
「お前が一番手だ」
「承知しました」
何の競技の一番手だよ!?とリュウガは思ったが、顔にも口にも出さなかった。
つーか、学ランで競技に参加なのか…と諦めに似た気持ちが生まれている。
は、その様子を少し哀れみながらも、仕方がない、とすぐさま諦めた。
「ケンシロウ、何かあったならば、私が全て代わろうッ!」
「兄さんッ!!」
トキとケンシロウは無駄に見つめ合っていた。
「トキってさ、あんなキャラだったっけ?」
バットは隣にいるリンに聞いた。
彼女は笑顔で答える。
「一度死んで、性格が変わったんじゃないの?」
俺も1回死のうかなーなんて、バットは思うのでした。
何だかんだで、人は集まり、レイ(大きい方)やユダまでいる。
しかし、彼等は完全にやる気なしだ。
元より、やる気があるのはラオウとシュウだけなのである。
「で、ラオウ。何からするの?」
はラオウの前に立った。
「やはり、ここはフルマラソンだろう!」
「うちはジュウザを出すから、そっちはリュウガを出してよね!!!」
フルマラソンって、運動会の種目だっけ?という問いかけは許されなかった。
は、ケンの側を離れたがらないジュウザを無理矢理引っ張り出した。
リュウガは、早速彼女に最期の別れを告げている。
「、俺が帰らなかった時は、達者に暮らせ」
「リュウガさんなら、帰って来れます!!フルマラソン往復でも大丈夫ですよ!!」
いや、それは人間じゃねぇだろ、と横で聞いていたジュウザは思う。
とにかく、競技のスタートラインが引かれた。
ちなみに、ケンシロウが引いてくれました。
「位置についてー、ヨーイ!!」
リンがそう叫んで、耳を押さえた。
その時である。
サッと何かが落ちてきた。
「え……?」
「これって」
雨だった。
砂漠に雨は滅多に降らない。
ラオウは、驚いてを見た。
そ知らぬ顔で、彼女は子供達を屋内へ導いている。
「化粧が落ちるぅぅ!!!」
怒り狂ったユダの横で、レイはいそいそと移動中。
バットは、リンの腕を引いた。
「くそぅ、砂漠の魔女め!!」
誰にでも分かった。
この雨は、が降らせたのだ。
「せっかくの運動会がぁぁ」
シュウは天を見上げてそんなことを言う。
そんな夫をは一喝した。
「シュウ!!ユメが濡れるッ!!」
「はひぃッ!!!」
最後まで残っていたケンを抱きかかえ、ユメの籠を引っ掛けて、シュウは凄まじい勢いで家の中へ消えた。
「残念だったわね、ラオウ」
「フン、残念など思ってもおらんくせに」
「あら、とっても残念だったわよ。ジュウザのフルマラソン往復が見られなくて」
そっちかよ!!とジュウザが遠くで叫んでいた。
しかし、完全無視である。(笑)
「これでは、子供達の記念写真が撮れんではないか!」
ラオウが怒りを込めて叫ぶと、は微笑んだ。
「運動会なんて無駄な体力使わなくっても、貴方の娘に最高の笑顔を作れるわよ?」
そう言って、は上着を脱いだ。
ラオウが大切そうに抱えていたキラにそれを被せる。
キラは笑った。
可愛らしい笑顔だった。
「ありがと!」
「どういたしまして。ね、言ったでしょ?ラオウ?」
魔女は、こんなことも出来たのだ。
雨を降らせることも出来れば、子供から笑顔を引き出すことも出来る。
何でも出来る。
どんな願いも叶えられる。
そんな、魔女。
美しく、強い。
「家にいらっしゃい。みんなでご飯にしましょ。、手伝ってくれる?」
「ええ。料理は得意よ」
「知ってるわ」
「よかった」
2人の母は並んで、歩き出した。
リュウガは、急いで自分の恋人をについていかせる。
役に立つかどうかは不明だが、いないよりはマシだろう、といった考えだ。
キラは相変わらず、キャッキャと可愛く笑っていた。
家の中で、たくさんの人が集まっていた。
温かい料理を囲んで、子供達が笑っている。
わざわざ、運動会などしなくても、子供達の笑顔は見られたのだ。
ラオウは、どっかりと椅子に座った。
そして、カメラを出してはドキドキしながらレンズを向ける。
キラが父の横で微笑んでいた。
「ちゃーん、私の走りを見せたかったんだよ!!」
「いつも見てるから別にいい」
「ガーンッ!?」
「サウザーにも声かけて来ようか?濡れたら逆ギレするんでしょ?」
ケンは可愛らしい笑顔でそう言った。
ちょっと母親に似すぎだろ?とジュウザは思ったが、やっぱり可愛いので許してしまう。
(結局、可愛けりゃ何でもいいのか、この男!!)
「ケン、そう言った雑用はジュウザがするから。ほら、リュウの隣に座ってなさい」
「何で俺が雑用なんだよーッ!?」
「そういうのは俺が行って来るよ!」
挙手したのはバットだった。
彼は、この村で数年を過ごし、立派な青年になった。
………の言いつけを必ず守る、立派な青年に。
「うん、行って来て」
バットは颯爽と出て行った。
明らかに調教されてる、と誰もが思ったが、口に出さなかった。
恐いから。
「はい、ケンシロウ」
「ありがとう、義姉さん」
「北斗の家に女性がいるってことは、いいことだな!ラオウ!」
何故か納得しているトキは、ラオウに視線を向ける。
そして、止まった。
それに気づいた誰もが止まる。
ラオウを見て。
彼の行動を見て。
「あら、ラオウったら」
は呑気な声だった。
「キ、キ、キラ、動くな。いいか、動くな!」
「うにゅ?」
「ああ、駄目だ!!ブレる!!ブレてしまうではないか!!」
「パッパ〜〜!!」
「こ、これでは写真がッ。初余所のお家での食事会♪の写真が撮れん!!」
結婚して、娘が出来ると、夫はパパに変貌する。
「ちゃーん!!うちもカメラ買おう!!」
「うちの何処にそんな金あるの?」
「私のヘソクリ!!」←もうヘソクリじゃなくなった瞬間。
「父さん………」
END
ひぃぃぃありがとうございました北崎さん愛してるー!!
なんとうちのブログネタで書いてくださったそうなのです!!
あ、あんなアホネタでこんな素敵なものが頂けるとは…
正に海老で鯛を釣ったようなものですな!!
うちのヒロインのあほっぷりもよく理解して頂けてて嬉しいですvv(そこか!)
あと、学ラン姿の狼兄様に正直ムラムラ来ましたハァハァ(落ち着け)
超エロい!何その装備!「エッチな下着」レベルだよ!!
ぜひその格好でフルマラソン走って汗まみれになって前を寛げて欲しいです
やだ、はしたない!けしからん!もっとやれ!!!