穏やかな午後の陽気の中、は部屋のベッドからぼんやりと外を見ていて、オレはその隣に座って本を読んでいる。
なんとなく外に何かあるのかと思って本から視線を外して様子を見てみると、どうも雲を見ているらしい。
一際大きな面白い形の雲をじっと見つめて、たまに嬉しそうに笑ってみたり、口を尖らせてうんうん唸ったりしている。雲の形を見て食べ物の連想でもしているのかもしれない。色気より食い気だから。
少しは隣に恋人が居るって事を自覚して欲しいと、少し妬ける。でも、の百面相は見ていて飽きないし、可愛いな、とも思う。
再び視線を本に戻したら、しばらくしてから肩に柔らかいものが触れた。
見ればがいつの間にかうつらうつらと舟を漕いでいた。後ろに倒れたら危ない。のことだから、後ろに転がって頭でも打ってしまいそうだ。
「、眠い…?」
「んー…ぅん…まだ食べてないよ…?」
「……ぷっ」
どうやら既に夢の中に片足を突っ込んでいるようだ。返事まで面白い事になっている。やっぱり食べ物系の連想をしていたんだな。それで眠くなってきても、想像が夢に出てきたというわけだ。わかりやすくてとてもいい。
噴き出して笑いそうになるのを堪えて、をそっと支えると、ベッドに寝かせてやった。
ブランケットをかけて頭を撫でてみる。
ふわふわした、少しだけ癖のある柔らかい髪から、甘い匂いがする。
ずっとこのままで居たいと思う。
は、いつか自分の世界に帰ってしまうかも知れない。
でも、だからこそ――
「」
今の時間を大切にしたい。
「…好きだよ」
だから、もう少しだけ。
このままで居させてくれと、ささやいた。
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