何をしたって怒らない、何を言っても怒らない。 彼は甘すぎると思う。けれどその反面、残酷だとも。 だって、これだけいつも優しくされ続けたら、離れられなくなるから。ずっとずっと、甘えてしまうから。 ｢いつかあんたが欲しい言葉をあたしが言うと思ってる？｣ ｢どうかな。高望みはしない事にしたから｣ ｢あっそ｣ ほんとに欲がないね。ちょっと腹立つわ。そういうの、イイ子ぶってるみたいで。 理不尽な怒りを向けてやると、トキはの顔をじっと見つめ、それから微笑んだ。 ｢確かに、イイ子ぶってるんだろうな。君に嫌われないために｣ ｢…ふん｣ ああ、またそうやって笑って、優しくするから。 あたしはあんたから離れられなくなってしまうんだ。 微笑みに報われた ねえ、おこってみせて。いうこときいてあげるかもよ。