My heart cries out to your heart 僕の心は君の心に叫ぶ I'm lonely but you can save me 孤独な僕を君ならば救ってくれると My hand reaches for to your hand 僕の手が君の手に届く I'm cold but you light the fire in me 凍える僕を暖めるのは君という光 My lips search for your lips 僕の唇は君の唇を探す I'm hungry for your touch 君の感触をこんなにも求めて There's so much left unspoken もう 言わなくてもわかるだろう And all I can do is surrender 僕が出来ることは溺れることだけだ To the moment just surrender ただ身を任せることだけだ ―――Queen:”One year Of Love”
それを直視した瞬間、もう二度と彼には会えないのだという実感が溢れ出して、は部屋を飛び出してバルコニーに出た。 しかし、この苦しさを紛らわせるわけにはいかない。 知らずのうちに、の唇は彼の口ずさんでいた歌を紡いでいた。
One sentimental moment in your arms Is like a shooting star right through my heart It's always a rainy day without you I'm a prisoner of love inside you - I'm falling apart all around you… "
「…あの唄か」 呟いた彼の声は、いつもどおりに振舞おうとしているようで、やはり悲しげだった。 「…悪かったな」 とんとん、と自分の頬を指して、は叩かれた頬を少し押さえた。 「いえ…私こそ。取り乱しちゃって…すいませんでした」 失態を詫びると、ジュウザは肩を竦めて、別に気にしてねえさ、と答え、重い空気を壊すように頭を掻いて、明るい声で言った。 「女、殴るもんじゃねえな。気分悪いったらありゃしないぜ」 手摺の傍に立っているに近づいて、いつもよりもずっと優しく頭を撫でるジュウザに、はほんの少しだけ微笑むことが出来た。 「…”女としてみてもらいたいなら”」 どこの誰に言われたのか知らんがな、と軽口をたたくジュウザに、は小さく笑った。 すっかり日が落ちて、星が雲の隙間からちらちらと見える空を見上げて、は溜め込んでいた言葉を吐き出した。 「…私がもっと強かったら。もっとディロンさんが信頼できる実力があったら良かったのに」 お前の所為じゃない、と言おうとするジュウザを頭を振って制し、は続けた。 「覚悟が足りなかったんです。…こんな後になって覚悟ができても、もう遅いけれど」 そうだ、全てがもう遅い。 「…否定はしない。…けどな」 わかっているが、それでもだけが悪いわけではないとジュウザは思う。 「お前が同じ怪我してたら、あいつはもっと後悔しただろうさ」 ジュウザが小さな背中を擦ってやると、は俯いてぐっと頭をジュウザの胸に押し付けた。 泣き顔は見られたくないけれど、ただ、泣きたいのだろうから。 「…ふ…、っ……、」 嗚咽を漏らして震えるの目から零れた涙は、ぽたぽたと落ちてバルコニーの床に丸いしみを作る。 そんなジュウザの分まで涙を流すかのように、はひたすらに泣いて、夜風ですっかり身体が冷えた頃に涙を止めた。 そして、ディ・ロンの願いとは裏腹に、彼女がもう自分の庇護を必要としないことも。 「…出て行くのか?」 あっさりと頷いたに驚くこともなく、ジュウザが黙ってが拭いきれなかった涙を親指で拭き取ってやると、は少しだけ微笑んで、ありがとうございます、と礼を言った。 「一応、理由を聞いてもいいか」 少し鼻声だが、はっきりとした意思を持って、は静かに口を開く。
「…私の名前は。拳王軍の特務士官でした」
告げる娘に最早空虚さはなく、代わりに確固とした存在を取り戻していた。 |
引用 Queen,"One year Of Love" in A Kind
Of Music, (1986), Written by John Deacon.