定期的に軍の状況を主に報告していたリュウガは、ラオウから再びに会った事を告げられた。
しかし、だからと言ってリュウガには何も出来ない。

リュウガはを救いに行けないのだ。

前回はラオウがまだに会っていなかったし、敵対してもいなかった。
の記憶はすっかり抜け落ちていて、まるで命を狙う必要などなかった。
だが一度ラオウに歯向かえば、例え記憶があろうが無かろうが関係ない。

(俺はもう、お前を待てぬ)

リュウガは宿命に生きている。
生涯をその為に費やしていると言ってもいいほどに。
だから、これ以上を待ち続ける事はできない。

北斗3兄弟の中でもっとも華麗な拳を持つ男、トキの肉体はそろそろ限界だろう。
ラオウもそれを感じているようだ。
直にあの兄弟はぶつかる。
そうなると、ラオウを止められるものはケンシロウくらいしかいなくなる。

(…ケンシロウ…ユリアが認めた男か…)

民衆の心を掴むことができる強き男と聞いている。
ラオウとは正反対だ。
どちらが乱世を支えるに相応しいのかを見極めるのが己の宿命。

ならば、リュウガは身を捨ててケンシロウの素質を見極めねばならない。
しかしケンシロウは、聞くところによると感情、特に怒りによってその時に発揮できる力に差が出るらしい。
それではいけないのだ。

世を支える巨木は負けてはならない。
世を統治するには、力もまた必要だ。
そしてリュウガは、自分がいずれかが大木となるための糧になれればいいと思っている。

何を犠牲にしても――例えそれが、愛する女への想いでも。


「…

孤独の狼が愛しい人の名を呟いた夜、彼が想う女は同じように彼のことを考えていた。

誰も知らない、小さな同調である。