「えと、と申します!リュウガさ…じゃない、リュウガ様の、ええと…雑用係みたいなものです。大したことは出来ませんが、雑用なら得意ですから、遠慮なく言って…じゃない、申し付けてください!よろしくお願いします!」
ひょろひょろの小娘が気の抜けた笑顔でペコリと礼儀正しく頭を下げたのを見て、ソウガとレイナは兄弟揃ってラオウを見遣った。
二人が思うことは同じだ。
((大丈夫なのか(なのかしら)、この子…))
すると、二人の視線を感じ取ったのかひょろひょろの小娘は二人の方に顔を向け、気の抜けた愛想笑いを浮かべて緊張気味にお辞儀をした。
正直言って使えなそうな雰囲気が物凄く出ている。
ラオウが女子供に手を上げない性格でよかった、とソウガは激しく思った。
どう見ても小突いたら飛んでいきそうな感じだ。
ラオウのデコピン一つで壁に激突しそうである。
漫画的に人型でめり込むかもしれない。
一体リュウガは何故このような明らかに一般人です!と言わんばかりの娘を連れてきたのだろうか。
しかも14、5歳にしか見えない少女を。
(まさかリュウガはそういう趣味か!?ではまさか二人はそういう関係!?いいのか!?これはアリなのか!?)
ソウガが悶々と一人で想像を爆走させていると、レイナが様子のおかしい兄に声をかけた。
「兄さん?」
「はっ!い、いや違う!オレは二人の仲を邪推などしておらんぞ!」
「……………………」
「あ…」
つい口が滑って余計なことを聞かれてもいないのに言ってしまい、ソウガがどうフォローすべきかと言葉を捜していると、リュウガが額を押さえながら口を開いた。
「…こいつはただの雑用だ。俺はこんな骨と皮だけの小娘に興味などない」
「ほっ、骨と皮だけじゃないですぅ!」
「喧しい。騒ぐな、拳王様の御前だぞ」
「うぅ」
リュウガの言葉で、はまだ何か言いたそうな顔をしながらも口を噤んだ。
勝手に喋るとほっぺたとかを抓られることは今までの経験上よくわかっている。
前にも口答えしようとして抓られたことがあるのだ。
痛いので止めて欲しいのだが、それを言うと今度は洗濯バサミとかが出てきそうなのでは大抵ここで黙る。
相手はどえすの意地悪銀髪マツゲなのだ。
チキンのには到底逆らえない相手である。
というか、この世界には彼女が逆らえない相手ばかりのような気がしてならない。
とんでもないところに来てしまったものだ、と、は遠い目をした。
「…もーやだ」
「何か言ったか」
「何も言ってません」
が静かになったのを確認すると、リュウガはソウガとレイナに説明した。
「こいつの処遇は俺に任せると拳王様から許可を頂いている。確かに見た目はその辺で干からびていそうだが、これでも言われたことはきっちりするように躾けてある。何でも言い付けてやって構わん」
「ひ、干から…!そこまで言わなくていいじゃないですかー!」
「騒ぐなといっただろうが」
「ぎゃん!」
ぽろっと言い返したの頬をリュウガの指が容赦なく抓った。
「い、いひゃいいひゃい、いひゃいでひゅうぅぅ」
「だったら静かにしていろ。何度も言わせるな、お前の脳はスポンジか?」
「ひゅいまひぇんんん、」
「ふん」
両頬を抓られて半泣きのをさらりと無視して、リュウガはラオウに向き直ると、お見苦しいところをお見せいたしました、と詫びた。
「…まあ良い。死なぬ程度に働け、とやら」
「はい…」
半べそで抓られた頬を赤くしながら、はぺこりと礼をして、リュウガに指示されてひょこひょこと下がっていった。
その情けない姿を見た瞬間、ソウガとレイナは揃ってこう思った。
―――ああ、あの子、いじられ体質なのか。
と。
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