おおかたの回復やら片付けも終わり、自損事故の怪我も回復呪文で治療終了。さてどうしようかと思っていると、冠をつけたセミロングの女の子が声をかけてきた。 「ねえ。貴方も彼らの仲間なのかしら?」 仲間って言うほど一緒に行動してないよね。どう言えばいいんだろうと思って私が考えていると、マァムが気づいて説明してくれた。 「エイミさん、彼女はさん。アバン先生の弟子ではないけど、私たちに協力してくれている人なの」 これは本当にそう思う。今回の私は結構役立たずだった。もっと真面目に修行しないと今後は彼らの役には立てないだろう。ランカークスに戻ったら、これを気にもう少し頑張って修行しよう。今後一緒に戦う機会があるかはわからないけど、魔王軍が地上侵攻をしている以上、生き抜くための戦闘能力はあった方がいいよね。 「大したことは出来ないけど、料理と雑用なら得意だから遠慮なく声かけて」 握手をして自己紹介を終らせると、彼女はにこりと微笑んで言った。 「それじゃ……早速だけど宴の料理を手伝ってもらえるかしら?」
「うおお〜っ!!」 皿に盛り付けられた色鮮やかな料理の数々にポップが期待感たっぷりの歓声を上げる。 「白身魚のアクア・パッツァ、これは貝類の酒蒸し、こっちは干し肉のピカタ・フレッシュトマトソース!んでこっちは大海老のトマト煮込み、それにハーブとイカのオイル煮ね。オイルはパンにつけて食べるのがオススメでーす!」 久しぶりに海鮮を沢山使えたので張りきってしまった。いいよね海鮮料理、個人的にイタリアンには海鮮だと思う。海の塩味がじっくり染み出したソースは旨みたっぷりで最高だ。海老もすごく大きいのをクロコダインが獲ってくれて(というか私が獲ってくれと頼んだ。海老料理したいし食べたいし)、実に料理のし甲斐があった。イノシシだの川魚だのが続いて正直飽きていたので満足だ。 魚ばっかりでは飽きが来るだろうから、もちろん他に肉を焼いたりチーズが切ってあったりもする。食事の準備に四苦八苦する兵士さんを顎で使いながら大人数分を作り上げた。ガッツリ料理をしたので流石に腕が疲れたけど、宴には量が必要だ。 盛り付けて兵士さんたちに運んでもらい、残った食材で適当におつまみを作ってそれらも運ぶ。レオナ姫と年下3人組は既に宴の席についていて、ポップはつまみ食いしようとしてマァムに早速ゲンコツを食らっていた。最後の一皿を持って私が席に着くと、宴が始まった。 「おいし〜〜っ!」 ちゃんと味見してあるので美味しいことは知ってたけど、やっぱり食事は皆でわいわい食べるのが一番楽しい。見たところお姫様も喜んでくれているようだし上出来だろう。見せ場ゼロで終らなくて本当に良かった……何かちゃんとやらないと来た意味ないからなー。 イカのアヒージョをパンと一緒にぱくついていると、ダイが駆け寄ってきた。 「ねえねえさん!」 目をキラキラさせているダイはまるで元気なワンコが懐いてくる様子そのものだ。ああかわいい。この子弟にしたいな。ダイの可愛さにほっこりしていたら、彼は私に言った。 「あれやってよ!踊り!」 踊りって、あれか。私が船の上で見せたやつのことか。私がなにかを言う前に、今度は横からレオナ姫が入ってきた。 「あら!貴女踊り子なの?」 レオナに続いてマトリフさんが食いついて来て(すごい反応したな)、マァムが更に乗っかってくる。 「そいつぁいい!衣装ならオレのガラクタの中から適当に見繕ってきな」 衣装あるんかい! 「おお、そう言えばワシが爆弾の材料を探しとる時に踊り子服が紛れておったのう」 なんで持ってんの!? 「へえ〜!ちょうどいいじゃない、私も見たいわ」 ……ハイ。一般人はお姫様のご命令には逆らえない。
と言うわけで、急遽踊ることになった。いきなり本番って、これはちょっと気合入れないといけないぞー。 「きゃー綺麗ー!」 若い女の子二人に騒がれるのはちょっと恥ずかしいんだけど、ダンサーは見られてなんぼ。落ち着け。大丈夫、下着みたいな衣装で踊ったことだってあるんだから。ボディラインも崩れてないし、平気平気。 それにしてもこの衣装、地はどう見てもサンバの衣装だ。ビキニのようなトップにほぼTバックのボトム。 衣装をお披露目した時のポップの鼻の下の伸びっぷりはむしろ面白くてかわいい。思春期の男の子ってこうだよね。マトリフさんも相当鼻の下を伸ばしていた。……うん、スケベな爺さんってこうだよね……。 急ごしらえの樽の太鼓と、瓦礫から発見された鈴のリズムに合わせて踊り始める。 ヒュンケルは1人で端っこにいて、クロコダインは少し離れた場所から数人の兵士達と観賞しているようだった。神殿で踊るのは爽快で気分が良く、皆の反応も上々でこっちまで嬉しくなってくる。ターンを繋げて剣士のおじいさん達と飲んでいるクロコダインの前にいき、踊りながら薄布をはためかせてふわふわと頬を撫でると、大らかなリザードマンは照れたように頭を掻いた。獣王なのに反応が可愛い。 再び宴の席に戻った私は、太鼓の音が終ると同時にポーズを決めて踊り終えた。皆の拍手と楽しそうな笑顔が最大の賞賛だった。 |